やめて……
剣と剣が交差し甲高い音がする中、凛は目の前の光景が非現実過ぎて理解に苦しんでいた。
何で目の前で人同士が殺し合いをしているのか、違う解決の仕方があるのではないかと。
凛は足に力が入らずにその場に座り込んでしまう。
「リン!……ック。……ハァッ!!」
「グハァ……」
ダングルの剣が山賊モドキを切り捨てた。
山賊モドキは凛の目の前に倒れ、死に際の一言を凛は聞いた。
「……じ、じにだぐない」
彼の目から生気が無くなり、動かなくなる。
「……めて」
突如、周辺が暗くなる。
だが、戦いは終わらない。
ダングルは兵士として優秀なのだろう。
盗賊モドキを凛を庇いながら次々と倒している。
「……やめて」
風が戦場を駆け抜ける。
一瞬の強風ではなく、断続的な風が吹き荒れダングルを含む全員が異変に気が付く。
「戦いを……止めなさい!!」
誰一人として立てぬ程の風が吹き荒れる。
「……何だ!?この風は!!」
「クッ……立つ事もままならん」
そんな中、凛は立ち上がった。
この瞬間にその場にいる全員がこの強風が凛の仕業だと悟る。
凛は近くで倒れた盗賊モドキに近寄った。
「何をする気だ!」
盗賊モドキのリーダーが声を上げる。
だが、強風で凛の元に声は届かなかない。
死んでしまったか、もしくは重体の盗賊モドキの身体に触れた。
すると、凛の手が光り輝きだした。
「リン!何をする気だ!!」
ダングルが声を上げる。
だが、彼の声も凛には届かなかない。
凛の手の光が消え後、同じように倒れた盗賊に同じ事をして回る。
強風は一向に止まず、動けるのは凛のみ。
最後の一人も同じようにした後に盗賊モドキに向けて凛が喋り出した。
「……戦いを止めて帰りなさい」
風は徐々に勢いを無くし、空は光が差してきた。
そして、元の快晴に戻る。
「ゲホッ!ゲホッ!」
「イッテ~~」
「ハァー。ハァー。……生きてる。……のか?」
ダングルに斬られ、重体だった者が次々と声を上げた。
死んだと思われた最初に斬られ、『……死にたくない』と声を上げた者も声を上げていた。
「……回復魔法」
盗賊モドキの中の誰かが声を発した。
「バカな!?アレは失われた魔法だぞ!」
盗賊モドキのリーダーは声を荒げ、今起きた出来事を否定した。
「けど、俺達の傷は癒えている!助けられたんだ!」
「黙れ!幻影か幻覚か錯覚のどれかだ!騙されるな!」
息を切らしなが更に声を荒げた。
仲間は全員黙り、周囲には静けさと緊張が漂う。
「……お主はリンなのか?」
ダングルが目の前にいる凛に向けて尋ねた。
「そうとも言えるけど、そうとも言えないわね」
「どういう事だ」
盗賊モドキも凛とダングルの会話に耳を傾ける。
「私は花々凛の中に眠る力の一部よ。本人とも言えるし、別の人格とも言えるわ」
全員が上手く理解できず、難しい顔をする。
「……お、お前は俺達をどうするつもりなんだ!?」
助けられた盗賊モドキが声を裏返しながら質問をする。
「どうするつもりもないわ。ただ、戦いを止めて欲しいだけ」
「なぜ、俺を。俺達の命を救った」
凛と目が合い、死に際の一言を口にした男が凛に尋ねる。
「……救えるとは思ってなかったわ。ただ、これ以上誰かが傷付くのを見たくなっかっただけよ」
男は凛の言葉を聞いて黙った。
「駄目よ。ダンさん」
「なぜだ!好機ではないか!」
盗賊が意気消沈している隙にダングルはその隙を付き、敵を倒そうとしたが、凛が前に立ち、邪魔をした。
「やめて。お願い……」
「リン!?」
凛は糸が切れたように倒れ、意識を失った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます