第12話「けっせん?」
・12・「けっせん?」
「お前、また寝なかったのか?」
「うん。今度は花子さんの事を夜通しで」
賢太はまたしても睡眠を削って調べ回っていた。内容は全国にあるトイレの花子さんの話しだ。
興味本位で映画にも手を出したら、結局眠れなかった。
「でも、多少はヒントになったのかな?」
「なったんじゃね? 何も情報無いよりはマシさ」
と、和馬は答える。
二人は夜の校舎の前に立っていた。
時刻は午後七時五十三分。
灯りは校舎脇にある幾つかの電灯のみが頼りで、学校の中は全てが闇だ。
「警報装置を切ってるとは言ってもさ、なーんか不安なんだよなぁ」
ペンギンこと、南極の根回しで一時的に学校の警報装置が解除されていた。しかし、九時を過ぎると再び作動させることになっている。
与えられた時間は約一時間。その間に花子さんを「何とか」する。
「見つけて、どうするんだっけ?」
お喋りな和馬はいつにも増して饒舌だ。
「本当なら成仏できていない死体を見つけて、色々しなきゃいけないんだろうけど……」
「静先輩のオカルトグッズと、まがのい様頼みか」
「私もあまりアテにしない事ですわよぉ?」
後ろから声がして、二人は飛び上がった。
「こんばんはぁ」
静がショルダーバックを肩に掛けて佇んでいた。
「ああ、いよいよなのね。楽しみ」
相も変わらず、この状況に身を置いている事に喜んでいるようだ。
次に朱音。彼女はほとんど手ぶらだ。特に不安を表に出している様子もない。ジーンズにパーカー、そしてくたびれた白い野球帽を後ろ向きに被っていた。
賢太は彼女の後ろにいるまがのい様を見た。
どうやら、まがのい様は辺りが暗ければ暗いほどはっきり見えるようになるらしい。初めて見た時よりも、その姿は鮮明になっていた。
「頼みの綱は朱音ちゃんだけだよ、マジで」
「あたしじゃなくて、まがのい様に頼みなよ」
朱音は後ろを向く。彼女は気付いていないが、まがのい様と目が合っている。
互いを信頼し合っているような、力強い視線。
このコンビは心配いらないだろう。
最後に合流したのが迫田。
アイスホッケー用の防具に加えて、ホラー映画御用達のホッケーマスクも身につけている。そしてホッケースティックを携帯するという完全武装だ。
「お、お前、ラグビー部だよな?」
と、和馬。
「それどうしたの?」
朱音は尋ねる。
迫田は何も答えない。張り詰めた顔のまま、校舎へ歩を進める。
「……あいつ、マジだ」
和馬はぼそりとつぶやいた。
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