第3話 「まがのいさま は 祟り神」
・3・「まがのいさま は 祟り神」
自室の布団に寝転がった賢太は、一連の出来事を振り返り、嘆息する。
驚くことも出来なかった。
現実離れした、まるで中高生受けのする伝奇小説よろしくの奇怪な光景を目の当たりしたのに。
ただ、茫然と立ち尽くすだけ。
恐怖に慄いたり、叫ぶなどのリアクションは一切なし。
あまりにも現実離れしすぎて、どう驚けばいいのか分からなかった。それが反応を鈍らせた要因なのかもしれない。
それにしてもまがのい様か。
賢太は髪を掻く。
まがのい様。この地方に根付く所謂、土地神様だ。
古くからの伝承にちなみ、毎年旧暦のお盆には祭りが開かれる。
その歴史は意外と古いらしく、伝統行事だのという宣伝文句の下、毎年、観光客確保の為に皆が皆奮闘している。
ただ、どんな神様なのかを、実はほとんどの人間は知らないようだ。見物客は元より、祭りの参加者も。そして実情を知ると、大体の者が複雑な表情をする。
まがのい様は祟り神だ。
今は人々の健康だとか、暮らし安全を守ってくれる神様だとか、色々振れこんではいるが、実際は人々に畏れられる存在なのだ。
大昔この辺りに伝染病が蔓延した時、それが祟り神、つまり『まがのい様』の仕業だと思われ、山奥の神社に祀られたのが最初だそうだ。
その思わず敬遠したくなる存在が彼女の後ろにいて、そしてどういう訳か彼女の力になっている。
まさか、関わったせいで、変な呪いでもかけられたりはしないだろうな?
そう考えると、背筋に冷たいものを当てられている気がしてならなかった。
――いやね、気が付いた時には、母親からもよく言われてたんだよ。
と、あの時、朱音はさばけた口調で話した。
『あんたの後ろに何かいる』ってさ。でも別にあたしには見えないし、特に悪い事は起きないから、そのままにしてるんだけどね。
祟り神に憑かれていたとしても、これといって、彼女は気にしていないようだ。
荒上朱音。
何故、彼女にまがのい様が憑いているのだろう?
彼女の身に降りかかる災難を退けている理由は?
疑問が次から次へと湧き出てくるせいで、全く寝付けなかった。
目を閉じても眠りにつくことが出来ない。その度に時計を見るが、全くと言っていい程、時間は進んでいなかった。
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