第11話 不思議な超戦士誕生!!

突如として表れた暗黒の要塞、その漆黒の鉄壁の内部は、地方でよくある郷土歴史資料館になっていました。その一角にあったのがブラック白雪姫コーナーでした。

ここでは彼女の等身大パネルが展示されていました。見たところは私達より、少し年上に見えます。ですが、その横の経歴表を見ると明らかに彼女がただ者ではない事がわかります。

「アケチ魔法アカデミーを卒業後、諸国を周遊、その最中に出会ったつけ麺に感銘を受け、つけ麺専門店を開業。しかし、業績不振から多角経営に乗り出すもことごとく失敗、借金返済のために賞金稼ぎを始める。その後、賞金稼ぎ時代に習った柔道の修行を本格的に始め、ついに黒魔術柔道を完成させる。それから、アケチ魔法アカデミーに闇の魔術による暗殺術の講師として招かれた。それと同時に反政府武装勢力をまとめあげ、巨大ゲリラ組織の棟梁に就任。この頃からブラック白雪姫を名乗り始める。そして、運命の決戦の日、七人の賢者達と共に政府軍と戦うも、ついに悪の魔女オミシア・ブラックの手によって拳聖ヒンデレラと共に亜空間に封印されてしまった。オミシア……」

「知っているのかリンデレラ」

「知らない……」

はずなんだけど、どこか懐かしい響きがするのはどうしてでしょうか。


そんな事より今はこの城を攻略する事が最優先です。この四層の天守閣には各フロアにトラップが仕掛けられている様ですが、中央の直通エレベータで一気に最上階まで登れます。

「なぁ、スタンプラリーをしながら最上階まで行ったら粗品が貰えるらしいぜ」

「遊んで場合じゃないでしょ」

「うん」


最上階ではルビーとサファイアが首を長くして待っていました。

「ちょっと遅いわよ」

「はい、粗品のオカマ印の素麺」

「どうも」

「おお、凄い眺めだなぁ」

最上階から見る眺めは見事なもので、街から平原、河川、遠くの山々まで見渡せます。


「ちょっとアンタ達何楽しんでんのよ」

「かなり余裕じゃない」

ルビーだかサファイアだかどっちがどっちかわかりませんがこの戦いの掟を語り始めました。

「いいわね、ここでは二対二で戦う、これが掟よ」

「別に強制もしないし罰則もない、でもそれが掟なの」

「はぁ」

「とにかく戦えばいいんだよ、祭りだぁ」

全く掟を理解する気もないクマーさんは、一人で攻撃に出るも、二人のオカマの連携の取れたカウンターにひっくり返されてしまいます。

「ダメですよクマーさん、連携しないと」

「おっそうか」

「前衛をお願いします」


無鉄砲にクマーさんが突っ込んでいきます。ここはひとつ十七大奥義の一つ「竜神大紅葉」を使いましょう。これは亜音速の正拳突きを連続で繰り出し、その摩擦で炎の竜巻を巻き起こし、周囲を焼きつくす大技です。これならクマーさんもろとも敵を葬れます。

申し訳ありませんが、クマーさんにはここで名誉の戦死してもらいましょうか。


「隙アリィ」

ですがクマーさんも同じ考えだった様で

「暗黒漆黒幻影脚」

急転回してからの連続蹴り、私の「竜神大紅葉」を全て打ち消します。

「ちょっとどうして私を攻撃するんですか」

「今のは明らかに私ごと殺す気だったよな」

「事故です」

「他殺だろ」

私とクマーさんの拳がぶつかり、その衝撃で天守の壁にヒビが入ります。


「カマァァァァ」

そこにすかさず二人のオカマの息のあった攻撃が入ります。私達はこの二人のコンビネーションを前に手も足も出ません。さすがは双子のオカマです。


「どうかしら私達のコンビネーション」

「すごいビューティフルでしょ」

ここでオカマに勝つにはこれ以上のコンビネーションを見せるしかありません。

「クマーさん、私達もコンビネーションで戦いましょう」

「出来るのかよ、そんなこと」

「出来ない事はないんですけど」

ただ、その技はあまりにも危険で。


「早くしてくれよ、あのオカマに勝てる技をな」

「禁断奥義神仏超融合」

「えっなにそれ」

「実力、体格、年収の近い二人が使う事で融合して新たな超戦士が生まれます」

「そんなのってアリかよ。でもそれしかないんだよな」


この技はデレラ拳の中でも幻の技。成功する確率は非常に低く、歴史を遡っても類似する技で超融合に成功したのは、空海と最澄くらいのものです。


「それで、どうやったらその技は出来るんだよ」

「それは……融合する二人が手を繋ぎ、念仏を唱えながら河川を端から端まで泳ぎきる事が必要です」

「えぇ……」

明らかにクマーさんは引いていました。


「そんな想像上の技、成功する訳ないわよ」

「オカマの前に散るがいいわ」

迫り来る二人のオカマを目にした私は、あわててクマーさんの手を捕り窓から飛び出します。天守の屋根を転がり落ちながら、向かう先は城の側を流れる川です。

もちろん私達を追って二人のオカマが追いかけてきます。私は振り返りざまにクマーさんを振り回し、二人のオカマを薙ぎ払います。これは三人に小ダメージですね。


邪魔者も追い払ったところで、頭をぶつけすぎて気絶したクマーさんを引っ張って川に飛び込みます。

ここから先はお経水泳ゾーンです。口に水が入るのも省みず、ひたすら念仏を唱えながら一心不乱に川を突き進みます。


向こう岸へたどり着いた時、私達は光に包まれました。

眩しくて何も見えないほどで、でもなにかとてつもない力を身体に感じました。



意識ははっきりとしている。力も身体中に渦巻く様で、僅かに力を込めただけで、川の水が巻き上がりしぶきを立てる。


これが新たな自分なのだろうか。都合よく持っていた手鏡を覗き込む。リンデレラにもクマーにも似た顔が写し出される。

本当に融合してしまった様だ。まるで味噌カツとサンドイッチみたいに。


「アンタ達本当に融合したのね」

「一体何物なの」

あまりの事態にオカマ達も怯えているらしい

「何物、そうだな。リンデレラとクマーだからリンデレマーって所かな」

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