【一章】マントヒヒ人の栄光のために

【一話】大嶋君は脳筋である

 ~2020年3月24日 大嶋蓮弥~


 俺の家庭は現在、俺 親父 お袋 それと親父が親父の兄弟から預かっている二歳年下の従妹の瑠奈るなの四人で暮らしている。

 

 俺の朝は早朝のランニングからはじまる。

 太陽より早く目を覚まし、昔から使っているランニングシューズに足を入れる。家の玄関から出て直進、3番目の街灯で右に曲がると雑木林に出る。子供のころから良く遊びに入っていたそこはもう目を瞑っても自由に走り回ることが出来る。

 家に帰ると瑠奈とお袋が作った朝食を食べ親父の仕事を手伝いに行く。


 ここまでが俺の普段の日常だ。

 だが今日は違った。今俺は今日の今日まで親父にさえも言えずにいる事を打ち明けようとしている。今まで何度も試みたがそのたびに失敗してきた。

 朝食を食べていた箸を置き気持ちを落ち着かせるため、コップに注がれた朝ランニングついでに汲んできたわき水を飲み干す。

 正面に座る親父に向かって……


「人間の……人間の高校に通うことになった」


 ブゥッッッッ!!


 親父が飲んでいた水を俺に吹きかけた。




「ゴホッ、ゴハッ」

「親父、そこまでびっくりすることか?」


 親父がむせ、隣に座る従妹が青ざめている。


 俺達、マントヒヒ人の人間嫌いはここまでだったか


「えっ 兄さん、急にどうしたの……」

「いや……人間の高校に行こうかと……」


 ガタッ

 俺の言葉を遮り、立ち上がった瑠奈が俺の両肩を掴んで揺さぶる。その手にはかなりの力がかかっていて――




 ~2019年3月24日 安藤政春~


「どういうことだね、知的生命体とは」


 日本の政府、つまり俺の雇い主が尋ねる。

 ここまで静まりかえって中発言するのはなかなか図太い神経を持っている。


「そのまま、皆様がお思いの通りであります。」

「我々のような高度な知能の持った生物……ということでいいのかね?」

「はい その通りでございます」


 その言葉を受け場が一気に騒がしくなる。


 それにあわせてアメリカ政府の連中の影に隠れていた男が前に出て資料を配りはじめるそしてそれは俺にもまわってきた。


「本来は部下の方が適任者なのですが、少々問題がありまして私が代わりに説明させていただきます。まずこちらをご覧ください」


 そういうと各国政府がプレゼンに使用するモニターに映像が写し出される。4人の人間が食事をとっていて、全員が白い髪を持っている。

綺麗な白い髪――俺の中での彼らの印象だった。

二人の子供、少年の方は俺と同い年ぐらいだろうか――は、どちらも白く美しい髪をしていて、とくに、少女の方は、肩まで伸ばした髪が少女の動作に合わせて揺れ、何か幻想的なものを感じる。

二人の向かいに座る男女も彼らと同じく透き通ったかみをもっていた。


しばらく彼らの食事風景をながめた後、

「彼らがそうです」


 彼らが?俺はてっきり人とは全く異なる姿をしていると思っていたのだが......


「この映像のどこに我々以外の知的生物とやらがいるのかね?」


 しびれを切らした男が尋ねる。まわりのどの人もおなじように疑問を覚えているようだ。


「では資料を」


男のその言葉に合わせて紙がめくられる音が聞こえ、誰もが資料に視線を向ける。俺も渡された資料を開き文章に目を通す。そこには、通常の人間のDNAデータと彼らのもの、そのほかにも彼らの持つ知能のデータ、身体能力などが記されていた。


――なんだ…これは……


「そちらの資料を見れば明らかだと思います。彼らが普通じゃないことを」

男が言葉を発する。

「彼らは我々と同じようにを進化させてきた生物なのです」


画面の中ではいまだ楽しそうな朝食が繰り広げられていた。

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