第7話 夜桜っていいよね

「で、この部はいったい何をする部活なんですか?」

「きまってるでしょぅ!帰宅する部活だよ!」

またわからないことを...

「帰宅することが部活って、普段の活動時間は何してるんですか?」

「そりゃぁ、待っとくんだよぅ」

「帰宅時間になるのを?」

「うん」

「意味ないでしょ!」

活動時間の終わりまで待機してその後帰宅するだけの部活なんて何の意味があるんだ。

「まぁねぇ、君の言う通りなんだけどねぇ。この部室も条件付きで貸してもらってるの」

「条件?」

「待機時間の間に、先生とか他の生徒からの依頼に答えるの。それが条件。まあほとんど雑用なんだけどねぇ」

「マイナスしかないじゃないか!」

「それだけじゃないよぅ、奥が深いんだよ、帰宅部って。ね!せんせ」

「ああ、全国大会もあるぞ」

「全国大会もあるの!?」

「細かいことはまた今度説明するよ。もう日も暮れるし、今日は解散だ。さ、帰ろう」

「それが部活なんじゃないんですか!?」

「気持ちの持ちようだよぅ ただ帰るだけじゃ部活じゃないでしょ?」

「俺はあなた達がそれを部活だと言い張ってるんだと思ってますけど」


あーだこーだ言ってるうちに下校時刻のチャイムが鳴った。

「じゃあせんせーさよーなら!」

「はーい、また明日」

「さようなら」

各々三乗先生に挨拶をして、部屋を後にする。


昇降口から出て、校門までそこそこの距離がある。そこを4人でてくてくと歩いて行く。


陽も落ちて薄暗くなり、なんとなく春の涼しさが感じられた。並んだ満開の桜も、きれいだ。


「先輩たちはどこから帰るんですか?」

「私と陽寄は、4番線の列車に乗って2駅目の駅でおりるよ。ひーちゃんと私はおんなじ中学校だからねぇ。ね、ひーちゃん」

陽寄先輩は、うんうんと頷く。

「じゃあ駅までいっしょですね」


ちなみに、学校から駅までは歩いて約30分くらいかかる。山々に囲まれた坂道を下っていき、トンネルを抜けると交通量の多い通りになるのだ。あとは駅まで直進。


「君たちはどっからかえんの?」

「俺は駅から1番線の列車に乗って5駅目でおります」

「わたしもいっしょ」

「え?お前俺と同じとこでおりんの?中学どこだった?」

「わたしひっこしてきたから、中学はとおいとこ」

「そういうことか。地元がおなじなら少しくらいなら名前とかうわさとか聞いてもおかしくなかったけど」

「うわさ?」

「い、いやなんでもないなんでもない」

まさか自分が氷の女王なんて呼ばれてるのは知らないよなあ。


校門を出て、下り坂を歩いて行く。

「活動は明日からだから、今日は普通に帰宅しよぅ!」

「だからなんなんですかそれ!?普通の帰宅と部活動の帰宅となにがちがうんですか」

「だから気持ちの持ちようだよぅ」

「だいたい、俺はまだ入るって決めたわけじゃ...」

「ほんとにそれでいいのかぃ?」

「え?」

「君はそうやって今までも逃げてきたんじゃないかぃ?一度くらい、自分の夢に向かって本気でがんばってみる気はない?きっと、今までと何か違うものがみえてくるよ」

「や...やります...あれ?」

俺の夢は決して帰宅部で全国大会にでることとかじゃなかったはずなんだけど。

「よぅし決まりだね!」

「いっしょにがんばろ。坂道くん」

「あ、はい」


そんなこんなで俺は帰宅競技部というわけのわからん部活に入ることになった。



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