第6話 部室にて
「紹介するよ。ここが帰宅部の部室だ。」
部室と言われる教室は東棟3階の東側の端っこに位置していた。説明が長くなるので詳しいことは割愛するが、俺たちの教室1年1組は西棟1階の西側なので、めっちゃ遠い。
その教室の学級表札には科学第二準備室と書いてあった。
「ここが部室ですか?科学第二準備室って書いてますけど」
「ああ、一応名目上はな。実際科学準備室なんて1つで事足りてるし新しい教材は倉庫に運ばれるからな。もうほとんど使ってないんだ。じゃ、開けるぞ」
先生が引き戸を開けた。そこは普通の教室の半分くらいの部屋だった。科学準備室の面影はなく、どちらかと言うとただの貯蔵庫。だが乱雑としているわけではなく、背丈の低い長机にテーブルクロスが敷いてあって少し古いソファがいつくかある。窓もあり、十分に外の光が差し込んでくる。全体的に年季がかっているが、小綺麗な部屋だ。
と、そこに2人の人影が見える。2人とも女性のようだ。
「君たちが新入部員かい!?待ってたよぅ!さっ入って入って!」
そのうち一人の女生徒が俺たちを目にするなりそう叫んだ。
「まあ落ち着け、久田。坂道、野中、彼女がこの部の部長の久田瑠実だ」
「よろしくぅ!!」
彼女はそう言って俺たちにむかって親指を突き立てる。
「よ、よろしくお願いします」
「よろしくおねがいします」
俺と野中は彼女に対してそう返す。
彼女が襟に付けている校章は俺たち一年生の赤色の校章と異なり緑色なので彼女は二年生だろう。
茶色がかった髪をポニーテールにしてまとめており、肌は小麦色...とまではいかないが健康的なほどよい色合い。背は平均くらいだろうが、なんとなく子供っぽい印象。だが...これまたどうして出るところはちゃんとでている。
...ちなみにこの間2秒。この短時間の間に女性の外見の特徴を列挙できるのは自分でも相当気持ち悪いな。
ま、俺はポーカーフェイスだし!俺の脳内を推測することは誰にもできまい。大丈夫。これがムッツリの強みだからな。
「坂道くん」
「ん?どうした」
俺は何食わぬ顔で野中に振り返る。
「せんぱいのからだをなめ回すように見てて、きもちわるい」
な...!
「なな、何をいいだすんだ!?俺は断じて見てない!」
見てたけども!ここで肯定するような奴はいないだろ。全力で否定するに限る!
「とにかく!俺はやましいことなんて全く考えてないです!」
「いやー、坂道。お前あの顔でしらばっくれるのもどうかと思うよ」
「先生まで!」
「ちょっとぉそんなにつよく否定するのもひどいじゃないか坂道くん!私なんて見るに値しないってことぉ?」
「うっ...そう言われるとどうしようもないんだけど...もういい加減にしてくれえええぇぇぇ!」
俺の声は天までこだました。
「あ、待った。もう一人紹介しないと」
「いやいや、俺がもう『完』て空気作ったんですけどね!?」
空気よんでよ先生...
「おーいこっちおいで町野!」
そう呼ばれた女性は陣取っていた1つのソファに横になっていたがのっそりと上半身だけ起き上がった。そしてこちらを一瞥するととよろしくと言わんばかりに手を振った。
「こら、だめだろーちゃんとこっちおいで」
「あい...」
彼女は長机に置いていたメガネを手に取り、それを掛けると不精そうに立ちあがる。
俺らの目の前に来た彼女はまだ寝ぼけまなこで、大きなあくびをして、
「低血圧なもんで。寝起き悪いけど、よろしく」
とまあ、なんともつかみどころのないなんとも言えないような自己紹介。
俺が返答する前に、またソファの方へ戻っていった。
「...今のが町野陽寄。二年生だ」
「ひーちゃんはねぇ、めんどくさがりだけど優しいんだよ?」
「今の挨拶だけじゃなんにもわかりませんけどね...」
いや、でもすらっとしたモデル体型で一見メガネの似合うクールビューティ系かな。おっと、いかんいかん。また野中に...
「坂道くん」
「ん?どうした」
「せんぱいのからだを、なめm」
「もういいよ!」
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