第2話 校内放送で名前呼ばれたことある?

時は2週間前に遡る...


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「じゃあ、部活動入部希望用紙を後ろの席の人回収してー」

入学式から1週間くらいが経っていた。LHRを済ませ、どの部活動に入るかの希望用紙を集めていた。そして暫しの間クラスメイトとたわいない会話をする

「なあ坂道。お前もう良くなったのか?それにしても入学してすぐインフルエンザで1週間も休むなんてお前もとんだまぬけだな」

こいつは中学生の頃からの腐れ縁の友人で、進藤介太しんどうかいたという。身長はおれと幾分変わらず平均的な体型で肌は浅黒く焼けている。髪型も短からず長からずのいわゆる「高校生らしい髪型」の基準を十分に満たしているといえる。基本的に飄々とした態度をとりとっつきやすく気性も穏やかだから、まあ付き合いやすいやつだな。

「べつにいんだよ。今んとこ中学生時代からの旧友のお前しか話す相手いないけど、べつにいんだよ...」

「...まあ気にすんなって!すぐ慣れるって。まーそれは置いといてお前部活動なにかするのか?」

「やるわけないだろ。おれはこの年まで帰宅部を貫いてきたんだ。人より早い時間に帰宅し、休日は基本家から出ず、ぬくぬくと生きていくのが俺の主義だからな!」

「そんなドヤ顔で言われても困るんだけどな」

そう言って介太は苦笑した。


放課後、下校しようとしていたところ、

『1年1組坂道くん、野中さん、一年部職員室まで。繰り返します...』

放送があった。校内放送で名前を呼ばれる事など日常的にあるわけでないので少し驚いた。しかしその空気を共有する相手もいないのでそそくさと荷物をまとめ教室を後にした。それにしても俺と一緒に名前を呼ばれたの野中さんだっけ?ってどんな人だったっけな。まだクラスメイトを全然把握してないからわからないな。

職員室に向かう途中昇降口近くで委員会活動に取り組む進藤と邂逅した。やつは俺を見つけるなり目を見開き近寄ってきて

「おい!お前職員室に呼ばれてたけどなにしたんだよ」

「なにって...おれもわからないよ。てかそんなに大騒ぎすることか?」

「いや、お前野中さんと呼ばれてただろ!」

「ああ、そうそうその人よりってどんなh...」

俺の言葉を遮ってやつは続けた。

「お前は休んでたからわからないかもしれないけどな、彼女はスーパー中学生って有名だったらしいぞ!学業の面でもスポーツでも優秀な記録を残し、他校の生徒にも名が知られていた。そんで美人!少し幼さがのこるがそれもまたよし!文武両道かつ容姿端麗さらに周りを寄せ付けないクールなな態度から『氷の女王』とさえよばれてるんだぁ!!!」

ほー。そんな人なのか俺は基本勘定が高ぶったりしないが自分の嗜好、色欲(笑)には忠実だ。ぜひとも早くお目にかかりたいものだ。その女王のやらにな!

「...わかったら...さっさといけ...女王を待たすことは許されん...」

ノンストップで喋り続けて息を切らした進藤がそう促した。

「ああ、そうするよ」

俺は、何かあるかもと少しの期待を胸に歩みを始めた。


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