帰宅競技部の日常

ヒマノヶ丘

第1話 帰宅競技部

 西日が窓から差し込む教室の春の夕方。この季節、まだまだ日も長くはなくて16時半を回ったくらいなのだが、空は赤色、橙色、山吹色と美しいグラデーションを奏でていた。


 運動部に所属する生徒の掛け声が静寂な教室によく響く。つまり室内には俺しかいないわけだ。部活動がある生徒は部活動へ、ない生徒は帰宅という時間帯である。


 俺は帰宅部に所属している。もともと今まで何かにのめり込んだり一生懸命になったり、そういう経験をしないで呑気に生きてきた俺に高校に入ってまで部活動をする気にもならなかった。

 だからあの日、部活動への入部用紙が配られたあの日、俺は迷わず「帰宅部」の欄にチェックをつけた。それなのに、だ。

「坂道くん。部活、いこ」

「...今行くよ」

 俺は何故か部活動に参加していた。あるはずもない帰宅部としての部活動に。


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