第21話「魔狼狂咆」
死の十二翼を広げる、破壊の
メタトロンから解き放たれた強力な重力波は、【
そして、その姿が
僅かな残像だけを残して、次々と周囲のパンツァー・モータロイドを撃墜し始めた。
一機、また一機と
「クッ、まずい! れんふぁ、グラビティ・ケイジ再展開! みんなを守ってくれ!」
『統矢さんっ、それは……今、メタトロンは【樹雷皇】のグラビティ・ケイジの内側にいるの。みんなを飛ばすために、グラビティ・ケイジを広げ過ぎたから――』
目を血走らせて統矢が
動体視力で追いきれぬ高速機動を、統矢の中の不思議な感覚は確かに
統矢は
加速力と速度では完全にこっちが上だ。
だが、18m前後のメタトロンは人型のシルエットを自在に
必死で追いすがる統矢の
自分と同じ
『目覚めて……みんな、死なないで、
メタトロンの右手が保持するライフルから、
一度に五、六機の
グレイ・ホースト大尉が率いる部隊も反撃を試みるが、走る火線は
――このままでは戦線が崩壊する。
いかな巨艦と言えども、周囲の
だが、
この特攻作戦の指揮官はまだ、いつもの飄々と緊張感のない余裕に満ちていた。
『グレイ大尉、本隊の皆さんに退いてもらってー? そそ、下がって下がって。無理に交戦する必要はないよ……
バラク・オバマの飛行甲板に、最後の艦載機が並ぶのを。
それは、統矢にとって愛機と同じくらい信頼できる戦士達。全てを失い
ずらりならんだ機体は、旧型の89式【
四機のPMRから無線を通じて、同世代の少年少女の声が響き渡った。
『
そして、
『
『うはは、ラスカ殿ってば超ヤる気スよぉ……自分、全力全開で援護するッス!』
【樹雷皇】が広げる重力の海と化した空間に、ふわりと四機のPMRが浮かび上がる。彼等は
『オーケェ、コンバット・オープンッ! フェンリル小隊各機……全力でブッ叩け!』
隊長の
正規の軍人達が援護する中、重力の荒波が満ちた宙空の大洋へ飛び込んでくる。距離を取っての包囲に切り替わった周囲を見渡すメタトロンへと、若き力が
同時に統矢は、残った最後のミサイルを全弾ブチ撒ける。
光と爆発の中で、練り上げられた力と技が躍動した。
『おっしゃあ、
重々しい装備で浮かんだ、
統矢の直感は、メタトロンが強力な防御力で衝撃を無効化するのを感じていた。
データや数値を目にしなくてもわかった。
一瞬の
パラレイドとの戦闘、特にセラフ級を相手にした際……人類の射撃武器は貧弱で無力だ。故に、通常の国家間の戦争ドクトリンは死に絶え、対パラレイド用戦術が
『ナイスよっ、沙菊ッ! んでぇ、脚を止めてくれちゃってえっ!』
――対パラレイド戦の基本にして全て、それは……近接戦闘での格闘戦。
赤い閃光が、走る。
闘争の空気に満ちた空を、駆け抜ける。
ラスカ・ランシングの
瞬時にガードでかざされた巨大なシールドに、
その
それは、普段から愛用してる二振りの大型ダガーではなかった。
『おっ
巨大なトンファーを握った右手が、真っ直ぐメタトロンを
接触、そして
『装甲を
改型四号機をビームの
そして、
フェンリルの眼を持つ
二発、三発と、
『摺木君、副砲の……
【樹雷皇】の中央に
外部からアクセスしてれんふぁの補佐を得るや、加速する【樹雷皇】の上で改型弐号機が手をかざす。その開かれた
そのまま落ち始めたメタトロンから、
『辰馬さん……そちらへメタトロンを押し出しました。側面に+3.8、優しく
『あーもぉ、お前はあ! なんでこういう時っ、そうも冷静でいられるかねえ! こっええ女だよ、ったく!』
メタトロンは
そのままバラク・オバマの広い
それでも立ち上がったメタトロンの、その失われた首に……白い死神が舞い降りた。
内蔵されたパイルバンカーが、小さな傷を致命打へと押し広げた。
同時に、辰馬はライフルとシールドを捨てて秘密兵器へと手を伸ばす。
試作品故に無骨な
『っしゃ、
必死に抵抗するメタトロンの左手が、改型壱号機を
それを避けつつ、
抜き放たれた太刀が風を
だが、メタトロンは止まらない。
レイルの泣き叫ぶ涙が止まらない。
統矢はその時にはもう、空母の中央で
『統矢さんっ、
「――アームド・オフッ! れんふぁ、【樹雷皇】を頼む! ……レイル・スルールッ、お前を止める! 終わらせるっ!」
【樹雷皇】から切り離された【氷蓮】が、空中で【グラスヒール】を受け取りマントに身を包む。そのまま統矢は、燃え盛る紫炎の権化と化した愛機を加速させた。
真っ直ぐ、眼下のメタトロンへと刃を振り下ろす。
メタトロンもまた、両足を広げて姿勢を安定させるや、右手のライフルを真上に向けた。
絶叫と絶叫が交差する中で、統矢はレイルと同じ
DUSTER能力が見せる永遠にも似た一瞬の中で、互いの叫びが互いを
『統矢っ! 統矢様はみんなのために戦ってる! だったら、統矢はボクのための統矢になってくれてよ! あの時代最初のDUSTER能力者と、この時代最初のDUSTER能力者なら!』
「寝言はっ、寝て言ええええええっ! お前が静かに寝れるってんなら、そのために俺は戦ってやるっ!」
『わかってよ、統矢っ!』
「思い知れっ、レイル!」
天を
最大出力のビームが、空を
暴力的な熱量の中で、真っ直ぐ統矢は
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