第8話 家におしかける日向庵将校

 悪の秘密結社なたあんはとうとう強行手段に出た。

 組織を裏切り、巨大ロボットバンガイナーを強奪していった上木悟老人。その孫でありバンガイナーの操縦者となった上木丈二。このふたりの存在はなたあんにとって最大のガンであった。

 なたあん将校、田中史郎は、このふたりの住む自宅に直接乗り込んだ。部下ふたりを連れて、上木家のインターホンを押す。

『はい。どなたですか』

 上木悟が返事をした。

なたあん将校、田中史郎です」

『ああ、田中さん。お久しぶりで』

「おじゃましてよろしいですかな。いろいろとお話があります」

『はいどうぞ。まあお茶ぐらいしかおかまいできませんが』

 座敷机をはさみ、上木悟と丈二、田中史郎と部下二人が向かい合って座った。

「バンガイナーを返していただきたい」

「いやですよ。あれはわしが作ったもんです」

「設計と、精密部分の制作だけじゃないですか。その他はすべてわれわれなたあんの人材を使ってるでしょう。もちろん費用もこちらもちです」

「奈良の大仏は誰が作ったか知ってますか?」

「? 聖武天皇……」

「でしょう? 実際に聖武天皇が銅を型に流しこんだりしてなくても、そういうもんです」

「話はまとまらないようですな。では、次は強行手段をとらせていただきますよ」

「ふーん。いいのかなぁ。これ、なたあんに送るよ」

 上木老人は座敷机の上のモニタにデータを表示した。

 丈二には画面が何を意味するのかさっぱりわからなかった。

 しかし田中は画面の意味がわかった。顔色を変えて、部下ともどもそそくさと帰っていった。

 画面は田中史郎がバンガイナー制作時に費用をちょろまかして甘い汁を吸っていた証拠の帳簿だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る