第7話 ニセロボットと豆腐屋

 豆腐屋にバンガイナーが現れた。

 巨大ロボット、バンガイナーのエネルギー源はオカラである。

 店に入ってきたバンガイナーは

「オカラをありったけ出せ」

と、すごんでみせた。このバンガイナーは身長二メートル弱である。

 いつからこんなに縮んでしまったのだろうか。これまでのバンガイナーは少なくとも電信柱の倍ぐらいの身長はあったのに。

「すいませんねぇ。まだオカラは品薄なんですよ」

 店のおやじは、平然とした顔でバンガイナーに500グラムほどのオカラを入れた袋を差し出した。

 『あれあれ健康百科』という番組でオカラが体にいいと言われてから、日本中で品薄になっているのだった。

 オカラを手にすると、バンガイナーはそのまま店を走って出ていった。バンガイナーは代金を踏み倒したつもりだった。

 だが、この店ではオカラはタダで配っていた。

 身長二メートルのバンガイナーは次々と豆腐屋を回っては代金を踏み倒していった。一部の店では金をとってオカラを売っているのだが、それでもたいした金額でないため、あまり騒がれることはなかった。

 豆腐屋に妙な格好をしたやつがオカラをもらいにくるということだけが話題になった。

「これでバンガイナーはエネルギー源のオカラを手にすることができなくなるだろう」

 バンガイナーを敵とする悪の秘密結社なたあんの将校、池田裕司はこの作戦を終了して満足げにつぶやいた。

 バンガイナーの基地である上木家ではすでにオカラの自給自足ができていた。

 どの豆腐屋も、バンガイナーと、二メートルの奇妙な格好をしたやつが同じ形をしていることに気づいていなかった。


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