第6話 エネルギーの自力供給に勤しむ祖父とその孫

「よし。できた。今度のはなかなかの出来だ」

 上木悟は、完成した白い四角いものを前に満足げだった。

「味見してみろ」

 孫の丈二にその豆腐をすすめる。

 丈二はいやな顔をしながら一口食べる。

「うん……」表情がやわらぐ。「これは、まあまあだな」

「まあまあか。そうか。ようやくそれなりの味に仕上がったようだ」

「それで、オカラは?」

「オカラか。そうだ。豆腐じゃなくてオカラが欲しかったんだな」

 巨大ロボット、バンガイナーはオカラがエネルギー源である。先日思わぬことでオカラが入手困難になったため、自給自足することを考えた悟老人であった。

 彼らの周りには失敗作の豆腐とオカラが山のように置かれていた。

「これ、使えねぇのか?」

「食える豆腐をつくるのに夢中になって、オカラのことを忘れていた」

「忘れるなっ!」

「まあまあ怒るな。この程度の味の豆腐ができれば、充分なエネルギーのオカラもすぐにできる。もう少しの辛抱だ」

 ふたりの努力の結果、バンガイナーのエネルギーを供給できるオカラの生産に成功した。豆腐の味がエネルギー源としてのオカラに関係あるのか不明である。

「醤油は?」

「切れた。買う金はオカラ制作費に消えた」

「醤油なしに冷ややっこ食えってかっ!」

 バンガイナーはオカラだけをエネルギーとして稼働する巨大ロボットである。

 この祖父と孫は豆腐だけをエネルギーとして当分生活しなければならないのだった。

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