第4話 ロボットの操縦者と制作者を襲う燃料問題

 悪の秘密結社なたあんと戦う豪傑ロボ・バンガイナーであったが――。

「ジジイ。なんかまたロボットが現れたぞ。出撃しなくていいのか」

 上木丈二、十七歳高校二年生が、あまり出撃したくもない口調で言った。

「ああ、エネルギー切れだ」

 ジジイことバンガイナーの制作者であり整備担当でもある丈二の祖父、上木悟、六十八歳はあっさりと言葉を返した。寝っころがって見ているテレビを見たままの姿勢で。

「エネルギー切れって、いつも豆腐屋から大量に買い込んでるじゃないか」

 豪傑ロボ・バンガイナーのエネルギーはオカラである。

 バンガイナーは3キログラムのオカラで通常運用で約二時間の稼働が可能である。必殺技であるバーストエルボーや、ガイナースプラッシュなどを多用しても三十分稼働が可能である。どんな技かは説明しない。

 バンガイナーに使用されているオカラコンバーターを特許申請すれば、悟老人は大金持ちだが、彼はオカラコンバーターの軍事転用を恐れて秘密にしている。もちろん、悪の秘密結社、なたあんで建造したのに、うまいことそのデータはなたあんに渡らないようにしてあった。

「オカラがどこにも売ってないんだよ。品切れ」

「まさか、なたあんの仕業? バンガイナーを無力化するための工作なのか」

「それがな……。あ、ちょうどテレビで言ってる」

「?」

 テレビでは

「先日放送された『あれあれ健康百科』の『オカラ超健康法』のために、どこの豆腐屋でもオカラが飛ぶように売れ、品薄状態が続いています」

「……恐るべし、『あれあれ』」

 出撃したくないことも忘れて戦慄する丈二。

 思わぬところにいた伏兵に為す術ないバンガイナーであった。


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