第3話 街に被害を出したロボットの操縦者とその祖父

 いきなり現れた二体の巨大ロボのため、街は数百億円もの被害を出した。

 別にミサイルをぶちまけたわけでも、格闘戦で転げ回ったわけでもない。ただ単に、二体の巨大ロボットが現れて、エコーのかかった声でなにやら言い合っていただけである。

 そのあと、ドリルのついたいかにも悪者風のロボットが、現れたときの地面の穴にもぐりこんで帰っていき、それを見届けたもう一体は空へ飛び去った。

 被害はドリルのロボットによる地下街の破壊、それに空からやってきたロボットの着地による被害、さらにその二体が現れたことによる交通の遮断など。

 だが、最大の被害は、言い合ってるときに一方的に説教たれていたほうのロボットが離陸するときのものだった。周辺の建物をあらかた瓦礫に変えていた。

 高校生だと言っていたので、そこまで理解していなかったのだろう。あれだけの巨体が離陸するための推力がどれほどの破壊力なのかを。


「って、なんだよぉ。俺が悪者かよ。だいたいじいさんがそういうことを逐一ちゃんと説明もせずに、変形の仕方とか武器の使い方とかばっかり教えるから。周囲に被害が及ばないような説明なんかまったくなしに。それで、やれ敵が現れた出撃しろ、だ。

 って聞いてるのか。じいさん。こら、ジジイ!」

 謎のロボットの操縦者、上木丈二は祖父に悪態をついた。

「ああ、聞いてるよ。ほら、まあ、戦争には犠牲がつきもんだからな」

 丈二の祖父の悟はすまし顔で熱い茶をすすりながら答えた。

「つきもんですますかよ。おい。だいたい戦ってないってーの。話し合いの結果、穏便に帰っていただいたの」

「お前が逆ギレして説教垂れるからあきれて帰っていったんじゃないか」

「ジジイにはそう見えるだけだ。俺はちゃんと誠心誠意平和的に話し合いをすれば、悪の秘密結社で世界征服なんて非現実的なことをしなくても世の中はよくしていけると……」

 丈二の話は二時間十五分続いた。ちなみに声はエコーしていない。

 もちろん茶は冷めた。

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