第2話 高校生の操縦者と悪の操縦者

 ビル街の地面が砕け、巨大なロボットが現れた。頭と右腕がドリルになったロボット。

「その名もサンバンナーだっ」

 巨大ロボットで日本征服を狙う秘密結社なたあんの開発担当将校、池田裕司は叫んだ。

 白いマントと顔の右半分を隠すようなマスクが異様ないでたちだが、名前はわりとありふれている。悪の組織にいるんだからそれ用のネーミングをされてもいいものだが、なたあんはそういう主義ではないらしい。きっと外部との接触があるときにはなにかのコードネームを採用するのかもしれない。

「こうして街なかで暴れていれば、いずれ裏切り者のバンガイナーが現れるはずだ」

 というわけで現れたバンガイナー。空からガイナーバードという飛行形態で現れ、変形して巨大ロボ、バンガイナーとなった。

「現れたな。裏切り者」

 池田の声はサンバンナーの拡声器を通じてバンガイナーにも聞こえる。もちろんその声はエコーがかかっている。

「裏切り者だとぉ」

 バンガイナーのパイロットの上木丈二が言い返した。もちろんこちらもエコーがかかっている。

「裏切ったのはじいさんだ。俺はどっちかというと被害者!」

「被害者?」

「そうだよ。なんで高校生の身空でこんなロボット乗って悪と戦わなきゃならねぇんだよ。わかるだろ?」

「え。けど、アニメなんかじゃ、ロボット乗ってるのってだいたい十六歳ぐらい……」

「バカかおっさん。アニメと現実ごっちゃにしやがって。そんなこったから世界征服なんておかしなことする企業に就職することになるんだよっ。

 こんなところに巨大ロボ出してきやがって、だいたい、地上に出る前に地下街むちゃくちゃだろうが。ほらみてみろ、道路封鎖とかしてるぞ。何万人に迷惑かかると……」

 丈二の話はこのあと二時間続いた。もちろん声はエコーしていた。

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