第12話 妹と初陣

 私は今、明日の「祝福の儀」を控えて、この6年を振り返っている。「祝福の儀」とは、6歳になる年に全国民がステータスを確認する、お祭りの様なものである。

 だれからの祝福かと言うと、「運命神」だそうだ。運命神が人の将来を縛り付ける法則だと知るものには、複雑な思いだろう。


 猫耳メイドの「ミケさん」だが、しばらく見かけないと思っていたら出産していたらしい。フルネームは、ミケ・リンドベル。

 ゴリラ・・お父様がメイドに手を付けたのかと思いましたが、ミケさんは元は帝国の奴隷で、我が国に侵攻してきた時に従軍していたそうです。その時には、妊娠していたとか。


 名前:ミケ・リンドベル

 種族:猫人種 人間


 レグルス王国では、ミケさんの様な種族を「獣人」とか「亜人」というような言葉では呼ばない。魔物に対する呼び名だからだ。

 獣人とは「コボルト」や「オーク」の事を、亜人とは「ゴブリン」や「オーガ」の事を言う。

 帝国では普通に使われる蔑称であるが、我が国では法に触れる言葉である。しかし、中には陰でそういう言葉を使う者もいる。

 ゴリ・・お父様は、ミケさんの身分を保証するために養子にしたそうだ。つまり、ミケさんは私の姉になる。




 私の初陣は、3歳の時に行われた。早すぎないかと思ったが、早すぎる様だ。普通は6歳以降に行われる。

 なんでも、ゴリラが私と早く狩りがしたかったらしい。もうゴリラと呼んで良いだろう。

 私が、自由に歩きまわれる様になると、さっそく魔の森「オオモリ大森林」へ狩りに出かけた。狩りと言っても軍事演習の一環で、お兄様と一千1000の精鋭も一緒である。


 しかし、精鋭の兵など必要無かった。熊・・クマ兄様が無双している。私はゴリラに抱かれて、その虐殺を見つめていた。トラ兄様も呆然としている。一千1000の精鋭兵も呆然としている。ゴリラは、どや顔をしている。


 遭遇から、数十秒。クマ兄様ひとりの手で、オーガの集落が壊滅していた。


「この先に、リザードマンの集落があるのだ。」


鼻の孔を大きく広げながら、私をトラ兄様にゆだねたゴリラが自慢の大剣を抜き放ちます。今度は、リザードマンを虐殺?魔の森にとっての、魔物ってリンドベル家?


その後、筋肉アピールが余りにウザかったので、ゴリラが集落に突入する寸前に魔法でリザードマンを殲滅せんめつした。


その時、はじめてお父様の本気まじ泣きを見ました。


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