7-5 「ゲノム・グレムリン」

7‐5 「ゲノム・グレムリン」





[2300年10月23日 23時12分記録 ジンボ・ムーンの独白]


 ショーン君……君はとうとう明日コールドスリープ装置によって長い眠りにつくことになる……この決定を覆すことが出来なかった僕を許してくれ……何年先になるか分からないが、君が目覚めた時にこのメッセージを聞いているとして、僕は君に謝罪したい……いや、本当なら君だけでなく、君に関わった全ての人々及び……メグちゃんにも……謝らなければならない。





 実はね……君に渡したボイスレコーダーは、盗聴器でもあったんだ……つまり、君がレコーダーに呟いていた言葉は全て僕に筒抜けだったんだ。





 なぜ僕が君にそんなことをしたかと言うと……いいわけがましい言葉を使えば、命令されていたからだ……。





 僕はA国機密機関の[上の力]から君のプライベートな情報の取得を命じられていた。





 [上の力]は、手っ取り早く君の【グレムリン効果】が及ぼす最大効果範囲を知りたかった。




 君の能力の発動にメグちゃんが深く関わっているコトが分かれば、スグにでも恋愛感情を抱かせ、最高に気分が高まるシチュエーションを作らせるように君達の動きをコントロールしていたんだ。





 君達が映画館を抜け出すのも、全て僕と[上の力]にはお見通しだった……その上であえて街中で君達に【グレムリン効果】を発動させるお膳立てをしたんだ。死者が出る危険性があると知りながら……。





 不思議だったろう? その後君の部屋にメグちゃんが訪れた時、ドアのロックがされていなかっただろう……それらは全て僕の仕業だ……。





 その直後に君が爆発させた【グレムリン効果】の出力は凄まじい物となり、同時に君の能力の全貌も[上の力]の科学者は突き止めたらしい……。





 そして君はお払い箱となった……。





 メグちゃんが取り返しのつかない結果になってしまったのは……ブラックマン博士が凶行に及んでしまったのは……全て私の責任だ……本当にすまない……なんと言って謝ればいいのか分からない……。





 それで、僕はせめてもの償いとして、[上の力]に強奪された君やメグちゃんの会話データ。そして、【グレムリン効果】の解析データを盗み取れないかと画策した。





 苦労の甲斐あって、それらのデータはほぼ全てこちらの手に納めることに成功したが、その際予期しないデータも同時に発見してしまった。





 それは[人類電子化計画]という恐ろしい計画の草稿だ……僕はそれらのデータを全て君と一緒にコールドスリープ装置に閉じこめることに決めた。





 なぜ危険を犯してまでこんなコトをするのか……それは僕自身にもよく分からない……でも、何か[見えない力]が僕の心を動かしている……今はそうとしか説明が出来ない……。





 でも、僕が今こうしていることも[上]のシナリオ通りに動かされいるのではないか? と思うこともある……もっと大げさに言えば……[人類の意思]がそうさせているような……そんなスケールの大きな局面に僕は立たされている気がしてならない。





 未来のショーン・ボーナム君に残すメッセージはコレでお終いだ。





 君やメグちゃんと一緒に過ごした日々は一生忘れないよ……





 僕が言う資格はないのかもしれないけど、楽しかった……





 いつかまた会いたいよ……それじゃあ……さようなら。 ショーン・ボーナム君。





 おやすみなさい[グレムリンの遺伝子]






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