第4話 始まりの始まり
霧生は眠っている間、不思議な夢を見た。
黒紫の灯火に似た炎が自分の前にあり、その炎は語りかけてくる。
「力が欲しいか?」
霧生はローブの男に言われた通りに答える。
「なきゃ、殺される」
「では、お前は自分の為に他者を葬る事の覚悟はついたという事か?」
黒紫の炎に問いかけられた時、霧生はドキッとなりしばらく答えに戸惑った。
霧生もその事を1番に気にしている。
確かに自分も殺されたくない。だが、だからといって他人を殺すなんてのは無理だ。
「ちなみにさ黒炎さんよ、あんた自分も殺さず、相手も死なないっていう方法知ってたりする?」
「それは都合が良すぎるであろう。だがお前は今までと同じではないか」
殺したことなんてねぇよ。
「というと?」
「お前は自分が生存するための食料に生命のある動物を食らってきたであろう。それと同じであると言ったんだ。」
いやいや、同じじゃないだろ。
霧生はばつの悪い顔をし、次の質問をなげかけよう......とした時、真っ白い光が自分に近づき黒炎が透けていく。
「まぁいい。お前は私が宿っている限り死にはせん。ただ殺すだけだ」
そう聞こえたような気がしたが、はっきりとは分からなかった。
目が覚めた時、霧生は大歓声に巻かれた。
周りを見渡したところ、場所はローマ帝政期時代のコロッセオに似た場所であり観客が円型にいるあたり間違いなさそうだ。
丸い闘技場のような場所は周りを溶岩で囲まれ逃げられないようになっていた。
霧生がキョロキョロとしていると急に会場全体に響き渡る男の放送音が耳に入る。
「おーっと新人戦初戦は今さっきマスター0に召喚されたばかりの夜花霧生選手だー。能力はただの闇魔法。さて、霧生選手に賭けられたペールは......0だぁー!この数は前代未聞だ!霧生選手巻き返せるか!?」
どうやら自分は全く期待されておらずただ殺されるのを見られるだけらしい。
ーーシュワーン
淡い紫色の魔法陣が展開され、そこから出てきたのは
「グワッハッハッハー」
ーーキャァーーーーーー
先程の10倍程にもなる大歓声に巻かれ出てきたのは
「来たぁーー。5年前に召喚されてから1度も負け無しのジェルフェン選手だー。ミスフルファンの異世界人は強すぎる!ジェルフェン選手に賭けられたペールは......3億だぁーー」
おいおい。1度も負けなしの相手とかゲームレベル高過ぎじゃね?
「グワッハッー。小童、運が悪かったな。新人戦はただの見せ物で俺のような強者の見せ場なんだよ。まあー恒例といった感じだな」
つまり新人戦とは2人の選手の中のどちらかが新人であれば成立。 だがその新人には強者が相手の為、勝ち目がなく金があまりに余っているこの業界の恒例行事となっているらしい。
そもそもあまりがたいの良くない霧生ががたいが良く筋肉質の大男に勝てるはずなどないのだ。
「おいおい。ジェルフェンさんさ、この殺し合いに正当性があると本気で思ってんのか?」
「ふん。戦わなければどちらにせよ殺される。それに勝てばそれなりに裕福な暮らしができるしな」
「なるほどな。強い奴は余裕なのな」
会場全体に開始のゴングが鳴り響いた時、霧生の生死を分ける最初の戦いが始まった。
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