雨の日の君
単発ですでに出していますm(_ _;)m
雨が降っている。
僕は雨が好きだ。
雨が降れば彼女に会える。
雨の日だけ、通学途中の花屋でバイトしている女の子。
名前はまだ知らない。
母の日にカーネーションを買いに行ったとき、明るく輝くその笑顔に一目惚れをした。それから何度か花屋へ行き気付いたこと。彼女は雨の日だけ花屋にいる。
雨の日、僕は花屋へ行く。
そして赤いアネモネを一輪買う。
そのアネモネが枯れる頃、また雨が降る。
何ヶ月かしてやっと名前が聞けた。
あまり聞いたことのないその名前は、口に出すと、ポカポカと体が温まるようだった。
同時に教えた僕の名を呼んだとき、君が少し嬉しそうに見えたのは僕の希望的観測だ。
それから何度も雨が降った。雨が降る度に僕は彼女に会いに行った。
そして赤いアネモネを買っていく。
この思いが君に届くように。
少しずつ僕らは仲良くなり、互いのことを話すようになった。
ただ、彼女は雨が降っていないとき何をしているかは教えてくれなかった。
それを聞いたとき、とても悲しそうな顔をしていたことがずっと頭から離れなかった。
何日か後、僕は彼女をデートに誘った。
彼女はOKしてくれたが、その顔は前と同じく悲しそうだった。
デート当日。僕は目一杯のオシャレをして、待ち合わせ場所へ向かった。
今日は雨だ。
少し残念に思う反面、心の何処かで安心していた。雨でなければ、彼女は消えてしまいそうだったから…。
私服の彼女はとても可愛かった。
まるでお日様のように輝いて見えた。
映画を見て、ご飯を食べて、お茶をして。
ふと、彼女はなんでもなさそうな様子で聞いてきた。
“雨は嫌いですか?”
僕は答えた。
“いや、大好きだよ。”
そんなの当たり前じゃないか。
雨の日だけ君に会える。
僕にとって雨の日は“君に会える日”なのだから。
彼女はとても嬉しそうに、でもとても悲しそうに笑っていた。
次の雨の日、いつも通り君に会いに行くと君はいなかった。
花屋の店長さんが僕に彼女からの手紙を渡してくれた。
雨に濡れるのも構わずに、家まで走って帰る。
手紙を読んだ。
“黙っていなくなってごめんなさい。
そして色々隠していてごめんなさい。
私は雨の精霊。
いきなり言われても戸惑いますよね笑
私の力はまだ弱く、天からでは雨を降らせられませんでした。
その為、地上へ行き仕事も兼ねて修行をしていました。
あなたに会ってとても楽しかった。あなたに会うために、雨を降らせそうになったり…。
そのせいで神様に怒られてしまいました。
地上で生活できる最後の日、貴方と過ごせて幸せでした。
これからは天の世界から、貴方を思い雨を降らせます。
どうか私の事を忘れないで。
いつか、また会えるまで。
P.S写真の意味、貴方ならわかってくれると思っています。”
手紙と一緒に入っていたのは、大きく咲いた向日葵の写真だった。
その写真はなぜか笑っている彼女と重なった。
僕は泣かなかった。
だってまだ希望はある。
いつか彼女と会えるまで、僕はまた雨の日を楽しみに待つ。
雨が降っている。
僕は雨が好きだ。
雨が降れば彼女に会える。
仕事終わり、僕はいつもの花屋に向かう。
そして一輪の紫のアネモネを買っていく。
一輪挿しに挿したアネモネが枯れる頃、また雨が降る。
写真立てに入れられた向日葵の写真。
それを見るたびに思い出す、彼女の笑顔。
今日も雨が降っている。
花言葉
赤いアネモネ…君を愛す
向日葵…私は貴方だけを見つめる
紫のアネモネ…貴方を信じて待つ
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