願わぬ願い

1匹の狼が高い崖の上に立っていた。


雪が降っている。

一体何年ぶりの雪だろう…。



長い間、一人で生きてきた。

それは、俺に力があったからだ。

自分さえ大切にしていれば生きていけた。

それは楽だった。

何にも縛られずに、自由に野山を駆け回った。


ただ俺は老いた。

今更仲間が欲しいとは思わない。

彼は空を見上げる。

雪が降っているのに、不思議と星がキレイに見えた。



そういえば、星の中には願いを叶えるものがあるらしい。

俺は何を願うだろう…?

そう考えようとしてやめたのを覚えている。

意地を張っていたのかもな…。


今なら何を願うだろう。

そうだな…。叶わなくてもいい。

ただ、願ってもいいのなら、もしなんでも叶えてくれるのなら、友が欲しい…。

今までの生き方を後悔なんてしない。

だけど、ただ今になって寂しくなった。




荒れた土地。

その地に響く1匹狼の遠吠え。


それは誇り高く、悲しく消えていった。



それはまるで狼の生涯をあらわしているようだった。

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