最後の願い
彼は一人だった。
一人で星を見ていた。
季節は冬。とても寒い夜だった。
彼には、もう家族がいない。
もともと親は、母しかいなかったのだが、死んでしまったのだ。
幼い彼を一人残して。
彼は、前に母から言われたことを思い出していた。
“星はね、死んだものの魂なの。だから、もし私が死んだら星を見て。
ずっとずっと貴方を見守ってる。”
彼は思う。
見守るだけでは足りない、と。
誰もいない、何も無いこの土地で、一人すごすならば…。
母さんの温もりが恋しい。
白く、フワフワしたものが降ってきた。
彼はそれが何なのか分からなかった。
ただただ、それは冷たく、彼の生命を蝕んでいった。
彼を酷い眠気が襲う。
彼は最期に願った。
“前に見た鳥のように、この空を飛んで母さんのところへ行きたい。”
彼が目を閉じた時、まるで星が泣くように一筋の流れ星が落ちていった。
次の日。
積もった雪の中、子熊が1匹横たわっていた。
“彼”は幸せそうに、安らかに眠っていた。
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