記憶の断片

 首を切り落とした。

 いつも通り、習慣のように、惰性で。

 そんな事をしても殺せない事はわかっていた。

 それでも今日もその首を叩き切る。

 切り落とした首を見つめて、それを床に叩きつけるように投げ捨てた。

 何故か。

 目に入った薄い色素の唇。

 半開きになったそれを自らのそれで塞ぎ、貪りそうになったからだ。


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 殺す、と彼は言った。

 あの日を境に彼は私を犯すのをやめた。

 あの日を境に彼は私を殺し続けた。

 私の願いを知って、それでもそうする彼はきっと、なんだかんだ言っていい奴なのだろう。

 首を切り落とされる直前、思わず笑みがこぼれていた。


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母に手を掛けた父が、母が意識を手放している間、その手を握りしめていたことも。

父に手を掛けられる直前に、母が静かに笑っていたことも。

私だけがその理由を知り、理解していた。






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過去編始めました


https://kakuyomu.jp/works/1177354054883968599

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狂壊の先 朝霧 @asagiri

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