欲しがり者2

 ある所に神様の見習いがいました。その神様の見習いはある日、神様に呼ばれ、こう言われました。

「これからお前には、百の願いを叶える力を授ける。その力をすべて、好きにあの二人に使いなさい」

 神様の指をさした先には、男がいました。

 二人の男は体格も貧しさも同じで、体は細く、生活は豊かではありませんでした。


 さっそく神様の見習いは、二人の男を幸せにしてあげたいと存分に力を使おうとしました。神様から百の願いを叶えられると言われたので、それぞれに五十ずつ、同じように幸せにしようと思いました。


 神様の見習いは、二人の男の仕事が順調にいくようにと力を使い始めました。すると、二人の男はさっせと働き、充実した日々を過ごし始めました。

 神様の見習いは、更に力を使います。二人の男の仕事は増々忙しくなり、生活は豊かに過ごせるようになってきました。


 神様の見習いはうれしくなりました。このまま二人の男を幸せにし、自分も神様になれる日が近づいたと満足した日々を過ごしました。


 しかし、ある日のことです。二人の男に変化が起きました。


 一人の男は豊かな生活を送り、傲慢になってきました。全部、自分のお蔭だと言い、好き放題に振る舞うようになりました。なにかをもらっても、

「もっとくれ、もっと!」

 と、満足することもありません。


 しかし、一方の男はどうでしょう。つつましい生活を送り、謙虚になっていきました。今の生活はみんなのお蔭だと言い、恩を返したいと笑顔で過ごしています。なにかをもらうと、

「ありがとう」

 と、ささいなものでも深々と頭を下げます。


 神様の見習いは神様の言葉を思い出しました。

「これからお前には、百の願いを叶える力を授ける。その力をすべて、好きにあの二人に使いなさい」

 それぞれに五十ずつ、同じように幸せにしようと思ってた神様の見習いでしたが、傲慢になってしまった男には力を使いたくなくなってしまいました。


 残っている力は、あと三十回分です。

 神様の見習いは傲慢な男には0回、謙虚な男には三十回の力を使うことにしました。


 傲慢な男は次第に貧しくなり、人々も離れていき、最後には命を自ら絶ってしまいました。

 謙虚な男はとても豊かになっていきましたが、神様の見習いが見た最後は驚くものでした。謙虚な男は、傲慢な男の墓を建ててあげていました。



 全ての力を使い切ったとき、神様の見習いは神様に呼ばれました。

「ご苦労であった。お前の判断は正しかったと思うか?」

 神様からの労いの言葉に、神様の見習いは感謝を述べ、こう答えました。

「神様、私の判断は正しかったと思います。ただ、理解できないのです。どうして謙虚な男は大金をはたいて最後にあんな男の墓を建てたのでしょうか」

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