6
せっかく楽しかったのに終わる時はいつも一瞬だ。
置いてあるパソコンからピーッピーッという警告音らしきものが入る。
師匠が画面を見て、私に苦笑して一つ頷いた。
オムカエが来たらしい。
ほどなくしてコンビニの自動ドアが開かれた。
店内にいないことなど承知済みらしく、向かってくる足音に迷いはない。
「やはりこちらでしたか。高橋様に御迷惑でしょう?」
「いえ、私はそんな
「……………」
………………」
千鶴は否定しようとしていたのに、それを彼は目で黙らせた。
「やめて。彼女は私の親友よ。そんな目で見ないで」
「……失礼しました」
「大丈夫、です」
「あなたのことだからここへ来た経緯は聞いているでしょ?私は邪魔をされるのが一番嫌いなの」
「存じています。その事については厳しく礼司を叱りつけておきましたので」
だからこんな遅くなったというわけね。彼ならばその気になれば校舎を出た瞬間に連れ戻されかねない。
風紀委員長、
私の家に代々仕える家柄出身なため、かなり口うるさく普段のことから一から十まで口を出してくる。極度の完璧主義者で、それを私にもおしつけようとするからたまったもんじゃない。
先程颯が出した礼司というのは副委員長の
性格なんかはまぁ、食堂の時のまんまだ。
この二人は生徒会役員達と違い、私達の一つ上、高等部二年になる。
後輩である彼らを目の敵にするのもどうかと思うが、とにかく仲が悪い。
特に颯と朝霞恵斗に関しては酷い。
昔、私も含めた三人で遊んでいたとは思えない変わりっぷりだ。
小さい頃は限られた自衛手段しか使えなかったから、ただただとにかく仲良くさせておこうという方向性だったからなぁ。
「とにかく、ここを出ましょう」
「どうして?」
「ここはあなたがいらっしゃるような場所ではないと何度も申し上げています」
「そうね。でも私も何度も言ってるでしょ?私はここが落ち着くんだって」
そりゃあ令嬢にしたらあるまじきことなんだろうけどね?
「校舎に戻れとは言いません。せめて寮の部屋にお戻りください。御供いたします」
「イ・ヤ・よ」
……そうだ!良いこと思い付いた!
箸を置き、横に立つ颯を見上げた。
「生徒会役員全員と風紀副委員長が私達に今後一切何の関与もしないと誓いの証文を持ってきたら大人しく寮に戻ることにする。また私の邪魔をされたら困るからね」
「………本当ですね?」
「本当よ」
颯は私に一礼し、師匠を一睨みした後、速やかに場を後にした。
途端に師匠がお腹を抱えて大爆笑し始めた。抱腹絶倒とはこのことか。
千鶴は訳も分からず私と師匠を交互に見ている。
「ひーっ!無理でしょっ!あの子達全員から?無理無理無理っ!」
「やっぱりそう思いますか?」
「当たり前でしょ!ふっ、フハッ!……あー面白かった。やっぱり君に協力して正解だったよ。こんな面白いものが見られるなんてね」
「ソレハヨカッタ」
今回のもどうやら師匠のお眼鏡にかなったようだ。
モニターごしだと一体何度お腹を抱えられたことだろう。
千鶴が一通りお菓子を食べ終えた頃、私達は師匠に促され寮に戻った。
最初から期待などしていない。
いくら完璧主義の颯とはいえ、奴等全員からもぎとるのは不可能でしかないし。
つまり、颯をコンビニから帰らせて、必要以上の接触を避けようという作戦だ。
決してお昼食べ損ねたオムライスの恨み、八つ当たりなんかじゃない。そこまで食い意地は張ってないですよ?えぇ、全然違います。全くの無関係ですとも、えぇえぇ。
嘘です。半分…八割方ありました。
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