『異世界詐欺師のなんちゃって経営術』はいつ始まったのか。
調べてみるとWEB版はニ〇一五年の四月七日、一巻発売は去年の四月ニ八日だってんだから、書籍版は一年経たないうちに完結したってことになるわね。てっきりニ、三年くらい刊行し続けてる長期シリーズだと思ってたのに。
ここ数ヶ月は刊行点数の劇的な増大についていくのが大変で、今読んでいるラノベが、今月に発売された新作なのか、それとも先月の旧作なのか、はたまた読もうと思って放置していた二ヶ月以上前の積み本だったのか、区別が難しくなるほど時間の感覚が無くなってったわ。
全てが超スピードで進む世界。日常の食事をサプリメントや栄養ゼリーで手早く代替するかのように、右から左へとラノベを読んでいく毎日。今日読んだ本は、明日には別の本に変わってしまっている生活。
だから、注目を集めなければすぐに打ち切られるという現実。
正直、この作品が四巻で終わってしまったという事実が残念で残念でたまらないわ。
「嘘が吐けない巨大都市」という設定は、これまでの宮地拓海作品になかったダークな雰囲気を纏っていて、その黒さが詐欺師だった主人公を引き立てるいい舞台になってたわ。
世界観とは対極的に、ファルまろ先生の描くキャラはどれも可愛くて、純粋で騙されやすいジネットも、貧乳ボクっ娘なエステラも、無口で小柄なケモミミ少女のマグダも、元気あふれるキャラのロレッタも、関西弁魔女っ娘なレジーナも、いい感じに理不尽な世界を中和する役割を果たしてたわね。
そして何より、著者の宮地拓海先生はtwitterや小説家になろう上でどのラノベ作家よりも営業に熱心だったわ。
なろうでは感想コメントにssを付け、それをまとめて公開するサービス精神を発揮。
twitterの全プレ企画ではssのフォーマットや宣伝動画を自作し、百数十人以上からのコメント一つ一つに丁寧な返信をするほど。
書籍は四巻で終わっちゃったけれど、小説家になろうやカクヨムに来れば、いつでも陽だまり亭のみんなに会える。
作品が打ち切られた無念さとか、出版業界の厳しさとか、そんなことは気にせずにジネット達は今日も働いてる。
陽だまり亭は、これからも変わらない。