第1話「座敷わらし」
高校から帰宅し、明日提出のレポートを仕上げ、そこでこみ上げた疲労から少し早めに寝床についたところだった。
俺は快適に寝ていたはず。
しかし深夜2時。
足元の方、それも台所付近から突然の物音である。
それと同時に人の気配。
俺は一瞬空き巣が入ったのかと思った。しかし、施錠はきちんとしたし、窓ガラスを割れたような音もしなかった。
という事は残すところあれだ。
幽霊というやつだ。
俺はそんなものの類を見たことも信じたこともなかったが、つい1ヶ月前に高校生活開始と同時に一人暮らしをしに越してきたこのボロくさい格安アパート。
なるほど。どうりで安かったわけだ。
俺はまんまと、いわくつきの格安ボロアパートをつかまされたってわけだ。
しかし。
金縛りやそのたぐいの現象は確認できない。
手足もしっかり動くし、視界も十分に全方位確認できる。
俺は勇気を出して物音のする方へ目を配った。
すると。
「おんな…の子…?」
小さな女の子だった。
後ろ姿で正確なことまで分からないが、小学3~4年生といったところだろうか。
よくよく目を凝らすと、髪型はおかっぱ。そして和服を着ている。
これはきっとあれだ。
座敷わらしといやつだ。
昔からよくテレビなどで都市伝説等として耳にすることがある。
訪れた先でイラズラをするが、その実幸福ももたらすとかなんとか。
詳しいことは俺も知らない。まさかこんな所でお目にかかれるとは。
しばらく動向を観察してみることにした。
すると、そいつは冷蔵庫を開け放った状態でひたすらに何かをしている様に思える。
それに何やら音もする。
(何か…食べてる…??)
それは確かに食べ物を咀嚼する音だった。
よくよく目を凝らす。
(………!!)
なんとびっくり。俺が明日の夕食のデザートとしてとっておいた「超お徳用デカ盛りミルクプリン」を無我夢中で食べているではないか。
なんたる外道。
「おい」
予定変更。自分でもびっくり。静かに動向を見守る予定だったが気付いたら思わず声が漏れていた。
明日の夕食後に約束されていた俺の至福のひと時がいま、小さな不法侵入者によって奪われようとしているのを見過ごすわけにはいかなかった。
小さな不法侵入者は振り向いた。
色はとても白く透き通っていて、黒髪のおかっぱ。割と整った顔立ちをしている。
すると向こうから一言。
「なに」
嘘だろ。
思わぬ変化球が来た。
ナイフのような目が俺を見つめている。
「いや…。それ、俺のなんだけど」
「ふーん」
それだけ言ってそいつは再びプリンを食べ続けた。
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