第3話
「魔王様、魔王様」
「ん」
いつの間にか寝ていたらしいオウルは、配下の呼び声で目が覚めた。
「どうやら、少しばかり疲れていたらしい、すまぬな。して、何か?」
「ハっ、お休みのところ申し訳ございません。魔王様のお耳に至急入れておきたいお話が」
「申せ」
「勇者が、東の町にて勇者が誕生したとの報告が入りました」
「そうか、下がれ」
「ハっ、失礼します」
配下が部屋から出ると、オウルはガタリと勢いよく椅子から立ち上がり、歓喜に体を震わせた。
「くふふふふふ、落ち着け、落ち着け我」
ゆるむ頬をパンパンと叩き活を入れる。
「まずはそうだな、勇者のいる町付近の魔物は弱い者を配置し、次第に強くなるよう配置して……くふふふ、忙しくなるぞ」
◆
そして、勇者の誕生から半年が過ぎた。
「遅い! なぜ勇者の情報が周ってこんのか……くぅ、じれったい」
オウルはあの日以来、待てども待てども勇者の情報が来ない現状に震えていた。
「ぬぅ、こんな気持ちは誕生日を待つ少年時代以来だ」
執務室内を右へウロウロ、左へウロウロ、オウルは落ち着きがなく歩き回っていた。
「魔王様」
「勇者か?」
「いえ」
「そうか」
オウルは少し落ち込む。そんな姿をみた配下は気にせずに話す。
そう、こんなやり取りは今に始まったことではないのだ。勇者の情報が入ったあの日から毎日行われているのである。
配下が部屋から出ると、魔王は大きく息を吐きある決断を下す。
「我自ら、確かめに行くか」
そして、オウルは誰にもバレずに魔王城から出ると、勇者が現れた町へと向かった。
◆
「やぁ、アタラズの町にようこそ、観光かい?」
「そんなところだ」
勇者が現れたとされる町、アタラズにオウルは足を運んでいた。
「して、勇者とやらは居るのか?」
オウルは、町に入るための許可書を発行してもらっている間に衛兵に話しかけた。
「勇者? あぁ、リセマラの事かい?」
「リセマラ? 勇者の名か?」
「名前は違うんだけど、彼よくその言葉を言っていてね、そっちの方が定着してね」
話している間に、町に入るための許可書ができたのか、それを受け取ると、町の中に足を踏み入れた。
「ふむ、一般的な町だな」
にぎわっているわけではないが、寂れているわけでもない。大きいわけでもないが小さくもない、オウルは町中を歩きそう言った感想が思い浮かんだ。
「流石に、勇者は旅に出た後だったか」
そして、話を聞きまわった結果、勇者は既に王都に向かっていた。
「次は王都か」
オウルはアタラズを出た。
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