第2話


 オウルがこの世界に来てからおよそ、数か月が過ぎた。


 その間に世界は激変した。理由は簡単である、オウルが魔物達をまとめ上げ、世界を魔物の国にすると人々に宣戦布告し、魔王オウルの存在を知らしめたのである。


 オウルは世界を征服するつもりも、人々を滅ぼすつもりも微塵もないが、そういうていの方が人々は本気を出し、勇者が生まれやすくなり、戦える環境になりやすいと思い行動に移したのである。


「ふむ、流石にそう簡単に勇者は誕生せんか」


 オウルは執務室の机に肘をつき、配下の魔物達の報告を聞きながらそうぼやいた。

 彼は自身の力と、配下になった魔物達の力を借り、オウルが初めて降りたった孤島に城を建てた。それも約半日で。人々からすると何もなかった孤島に急に城が建ったのだ、驚きも凄かっただろう。そして、何より孤島の向こうに見えた城こそ、この世界で一番大きな王都の城であった。


 その時はオウルも、この世界一の王都と自身の拠点の近さに驚きはしたが、知人の魔王も似たようなところに城を構えていたためこれもありかとすぐに納得した。


「せっかく、新しい世界に来たのに変わらぬものだな」


 オウルは、ふぅと一息つこうと手に持っていたペンを置き、椅子に体を預けると、なぜ勇者とのバトルを望むようになったのかを思い返した。


    ◆


「勇者と決戦?」


「うむ」


「そうか、命がけだな」


「命がけだ、なんせ相手は勇者なのだからな。だが、魔王冥利につきるではないか」


 知人の魔王はそう呟くと、どこか楽しそうだった。

 その時のオウルは、彼が輝いて見えた。そもそも、魔王はあるコミュニティに属しており、彼らが認めたものだけが魔王へとなれるのだ。


 争いが絶えない場所へは戦闘力が高い魔王が選ばれ、平和な場所では民たちに好かれるような魔王が選ばれる。基本的にその世界にあった魔王が選ばれやすい。そして世界の数だけ魔王がおり、性格趣味趣向は千差万別なのだ。


 だがオウルは少年の時に魔王に選ばれた。そして戦闘力がとても高かった。はじめは良かった。反乱してくる者や民を脅かすものを倒すなどその力を活かすところがあったからだ。だが数か月過ぎたあたりからだろうか、オウルの並外れた統治力で、彼が支配する場所は次第に豊かになっていった。


 それを見た世界の住民はオウルの元に集まった。魔王オウルの天下となった。

 魔王となり数年、統一し豊かになった世界を見て、自分の目標を失ってしまったのである。


 振るえぬ力など邪魔なだけだった。オウルはコミュニティを恨み、こんなことなら戦争が続く世界が良かったと何度も思った。

 だが、ある時コミュニティを通じて別世界の魔王と知り合った。

 その大体が魔王としての自分に自信を持ち、生き生きとしていたのだ。

 自分とは何かが違う。そう感じたオウルは、手あたり次第知人の魔王たちに話を聞いた。


 そして、大体の者がこう言った。


「勇者、我が最大の敵でありライバル。彼奴を倒すことが魔王の宿命よ」


 そして、オウルは気づく。

 自身は勇者と戦っていないことに。それで死のうとも生き残ろうとも、魔王としての価値がそこにあるのだと。

 

 それからのオウルは早かった。自身が居なくなってもいいように世界を整え、魔王が誕生していない世界を探し、色々と準備を進めたのである。

 

 そして……

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