第6話 赤い星

「チームゼロ、チームゼロ。こちらチームゼロ航海係ニイムラトウキ、予定通り火星にいったん立ち寄った後、火星インターチェンジよりワープウェイに入り、冥王星宙域までワープする。」

「ハシモト、ラジャー。」

「ニシオカ、了解。」

「スギヤマ、了解です。」

 トウキからの通信に、チームゼロの面々が次々と答えた。

 青い地球がゼロの機体の背後に広がっていた。そのうつくしさに、リンカは思わずため息をついた。

 「父さん、母さん……。お姉ちゃん。」


「チームゼロ、こちらウエキセンカ。戦艦オリオン戦略班の依頼で防衛軍火星基地にて荷物を受け取ります。」

「こちらコウスケ。センカ、荷物の中身は何?」

「極秘。私たちには開示されていないの。」

「コウスケ、了解しました。オーバー。」


 センカは通信機器のダイヤルを回した。

「ハルモニアシティ防衛軍火星基地、ハルモニアシティ防衛軍火星基地、こちら戦艦オリオンチームゼロ戦略係、ウエキセンカです。応答願います。」

「こちらハルモニアシティ宇宙・火星通信センターです。防衛軍の方ですね。」

「はい。任務で防衛軍火星基地におりたいのですが。」

「わかりました。火星防衛団に連絡をしておきます。チームゼロといことは8機ですね?」

「そうです。」

「わかりました。ではそのままの航路で基地に降りてください。」

「ありがとうございます。」

センカはまたダイヤルを戻し、チームゼロのみで使う通信設定に合わせた。

「チームゼロ、こちらセンカ。このままの航路で火星に降ります。」

「ハルカ了解しました!」

「ハシモト了解です。」

また声がいくつも聞こえてきた。




 火星は大規模な移民により、ずいぶん住みやすい星になった。ハルモニアシティはその中心地である。そこには国連宇宙防衛軍の基地もあるが、職員はだいぶ減ってしまった。代わりに民間の通信も取り扱うハルモニアシティ宇宙・火星通信センターが通信業務を担ったり、火星の自衛組織である火星防衛団が基地の管理をしている。

 ゼロが着陸すると、センカの機体に一人の男が近づいてきた。センカもすぐにキャノピーをあけてゼロから降り、固い握手をした。

「ダイマス団長。わざわざありがとうございます。」

「いやぁ、センカちゃんたちチームゼロの皆さんにはようお世話になりましたから。」

 ダイマス団長は、火星防衛団の団長である。火星では早いうちから警察のような自警団が組織されていたが、辺境戦争の勃発などにより業務が拡大。今では防衛軍さながらの活躍っぷりだ。元は民間の有志が集まって作った組織なので、軍隊よりも気さくで、火星らしく正義に熱い者が多かった。

 火星防衛団とチームゼロは協力して地球圏や火星圏の防衛に当たったこともあった。そのため火星防衛団のダイマスは、この日本の高校生を特に目にかけていたのである。

「ついにチームゼロが出征か。地球も厳しいな。」

「だからこそ、今訓練している若い訓練生が一人前になるまで、地球のことも頼みたいんです。よろしくお願いします。」

「わかっとるわかっとる。地球は火星防衛団に任せておけ。エリートの月防衛団も一緒だからな。安心して辺境を飛び回ってこい。」

「お願いします、ダイマス団長。」

「ああ、任せろ。」

「ところで、例のものですが……。」

「ああ、これだ。まず火星でとれた貴重なレアメタル。なんでもあっちの開発中のものに使うんだか修理に使うんだかで、火星のレアメタルがほしいってな。とりあえずいくつかの箱に分散したから、一人一人が持てばええやろ。」

「ありがとうございます。」

「あと、お前さんたちの上司に言ってくれ。A計画の概要は了解した、必要あらば協力するが、あまりに情報が少なく判別しがたいとな。」

「わかりました……。A計画ですか……。」

「なんや、知らんかったか?」

「ええ、名前しか知らないんです。戦艦オリオンの戦略班および戦闘班の資料でたまに見かける程度で……。」

「そうか、まぁええわ。チームゼロは若いし。」

「そうですね。」

「ほな、頑張ってな。生きて帰って来いよ。」

「本当に、ありがとうございます。」


 ほんのわずかな休憩だけとると、ゼロは赤い大地を飛び立った。

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