第1話

第1話


アルディナ王国、夏や冬があり、四季がくる大陸に位置する、王国国家。

大陸の中心にある大都市、オブディシア。市民が優雅に話し合っている、静かな大都市である。


オブディシアから何キロも遠くにある都市、アダマント。市民は優雅に話しているが、どこか貧富の差を感じる。

アダマントに位置する、魔術師を育てる学校、ミストラル。

大都市オブディシアの学校と比べると、比較的敷地は同じだが、外装や建物の構造がまるで違う。



大都市オブディシアは学校の周りに大量のクリスタルを埋めてあり、魔力を尽きても直ぐに回復できるようになっている。

それに比べてミストラルは、学校の1つの部屋にしかクリスタルは置いていない。

魔力をなくした場合はこの部屋に連れて行かれる。


都市アダマントは大量の魔術の道具が取引されている。

オブディシアに比べて、商業が盛んになっている都市である。



賑やかな商売の話が飛び交っているアダマントで、ミストラルに行くための石畳の道を、1人の少女がゆっくりと歩いていた。


首から綺麗に流している銀髪を輝かせ、瞳は真っ直ぐに青く輝いている、15歳くらいの少女である。

白く透き通るような肌、どこかを見通す様な雰囲気を醸し出し、どこかのお嬢様の様に感じる。


すれ違う誰もが目を疑う容姿とは別に、少女の衣装が変わっていた。

涼しく感じるベストとは裏腹に、肩から足まである、ローブを身に纏い、下には膝ぐらいまでの短いスカート、男性が履く様な真っ黒なブーツを履いて、何故か軽装の装備で、首からは赤く光るネックレスを付けていた。


「ふんん、ふふふん」

少女は誰かを待ちながら、肩から革でできた鞄を担いで、ローブに手を突っ込みながら、鼻歌を刻んでいた。


その時に、

「危ない!」

背後から聞こえるに、焦って後ろを向くと、1人の幼い女の子に向かって魔術の道具の鋭利に尖った魔物の牙らしきものが落ちて来ようとしていた。


周りの市民の人達が唖然としていた時、少女が何やら口ずさんでいた。

「イディ=テゴー=ベエントゥス」


すると、しゃがみこんでいた幼い女の子の周りを風が丸い球体状に展開していた。


誰もが諦めていて目を閉じていたが、目を開けるなり少女を守っていた。

「「「おお!」」」


市民の皆は指を突き出している、少女の方を向いて歓声を上げていた。


「怪我はない?」

少女はしゃがみこんでいる、女の子に手を差し伸べながら微笑んでいた。


女の子は少女に抱きつきながら涙を流していた。

「うぅグスッ、………ッヒク」


「よしよし」

抱きしめながら、女の子の頭を優しく撫でた。


「アリア!」

人混みの中、叫びながら死ぬ物狂いで走って来た。


「ママ!」


「アリア!」

女の子は少女の腕から離れて、走って来た女性に抱きついて思いっきり涙を流していた。

泣いている女の子を抱きしめて、頭を優しくその女性は撫でていた。


少女はその場を静かに離れようとすると、女の子を抱きしめている女性がこちらを見て、頭を深く下げていた。

「ありがとうございます!」


「いえ、助けるのは当たり前ですよ!」

少女は手を目の前でブンブン振りながら顔を真っ赤にさせていた。


「エミリアー! ごめんね、遅くなちゃた!」

そう言って、エミリアと同じ歳らしい人物が走って来た。


「全然待ってないよレミス」

エミリアは息を切らしているレミスに水が入っている瓶を渡していた。


レミスはそれを受け取ると一気に飲み干しエミリアを見てた後に、周りを見ると何やら汗をかいていた。

「…………エミリア、何かしたの?」


「ちょ、ちょとね〜」

エミリアはレミスに目を合わせず、背を向けていた。


レミスと戯れていると、先程助けた女の子がエミリアのローブを掴みながら、頭を下げていた。

「お姉ちゃん! さっきはありがとう!」


「本当にありがとうございます!」

2人はエミリアに深く頭を下げた後に、何度も頭を下げながら道を進んで行ってしまった。


燃える様な真っ赤な髪を揺らしながら、紅く輝く目でエミリアを睨んでいた。

「また、魔術を使ったの?」


「………はい」

レミスの眼力にエミリアは圧倒され、素直になるしかなかった。


レミスに散々説教されながら、ミストラルに向って歩き出した。

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