希望の足音 3
昨日と違って、目覚めは心地良かった。
ちゃんと仰向けに眠ったからだと思うけど、きっとそれだけじゃないよね。
だって、心が軽いんだもん。カーテンの隙間から漏れる朝日すらも、今日は違って見える。
ああ、朝がこんなに爽やかだと感じたのは、何時以来だろ。
俺はカーテンと窓を開ける。冷えた空気が寝起きで体温の上がっている身体を撫でるのが気持ち良い。
一応のではあるけれど、まるでハッピーエンドを祝福しているかのようだ。
身支度を整え、起きてきた雪奈や家族と朝食を食べる。俺は秋陽の家に寄る為に、早めに家を出た。
結果は、今日も秋陽は欠席だという事で会う事は出来なかった。やっぱり、寂しいな。秋陽にとっては二日だけの事かもしれないけれど、俺の体感ではずっと会ってないんだ。
だから放課後は見舞いをする事、その時にはちょっと高めのアイスを買って行く事を約束した。俺の財布にはちょっと痛いダメージだ。
けど、今日一日頑張るぞ。
電車の中のちょっと空いた時間、俺はスマホで例の投稿小説サイトを開いてみた。
『災厄姫に幸福を』が、更新されている。俺はさっそく読んでみた。
フリズレイアで時期女王修行中のマーテルの元に、リクリスタでクーデターが起きたという報せが届く。
同時に、赤砦都市グラシアでは民衆の抵抗とイニストの援軍により、新生リクリスタ軍は退けられたそうだ。
マーテルはほっと胸を撫で下ろす所で、今回の分は終わっている。
不思議な事に、俺があの世界で出した結果が、ネットの小説にも反映されているのかもしれない。
小説が現実に影響してるように、小説も現実に影響される……成程、リンクってこういう事かと納得した。
線路が曲がり、電車も揺れる。その時チラリと、快と純ちゃんの姿が見えた。静かに、隣に座っている。
しかし、二人の表情は幸せそうで……あの世界で見た、カイとトリシアそのものだった。
ふいに目が合う。声は出さないままだったが、快が何かを言った。唇の動きだけでも、言いたい事は分かる気がした。
「ありがとうな、静野」
だから俺も返す。
「どういたしまして」
ああ本当に、今日は良い朝だなぁ。
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