個性豊かな弟王子達との邂逅

「にゃ?」


「にゃ?」


 キリスに言われてやってきた部屋には、まるで鏡で映したかのように、そっくりな人猫族が二人いた。

 顔付は元より、傾げる首の角度とかまで、全く同じ仕草をしてる。


 違うとすれば、片方は雪のように真っ白、もう片方は夜空みたいな真っ黒な髪と毛皮の色をしていた。


 それと、瞳の色が正反対だ。


 白い子は右目がエメラルドグリーンで左目がアクアマリン。

 黒い子は右目がアクアマリンで左目がエメラルドグリーン。

 二人共、オッドアイというヤツだ。


「もしかして双子ちゃん?」


 私の予想に応えて、双子ちゃんはやっぱり同じタイミングで頷く。


「にゃっ、俺がマティにゃん」


「にゃぅ、おれがヤナにゃぁ」


 白い方が次男のマティ王子、黒い方が三男のヤナ、だそうだ。


「宜しくにゃ」


「にゃぅぅん」


 ただ、注意深く見てみると、双子とは言えちょっと違う。二センチくらい身長差もあるらしい。


 性格も、マティの方がしかっり者で、ヤナの方がおっとりしていた。


「で、あの揺り籠の中にいるのが、末っ子のネリーにゃ」


 クーニャが眠っていたのとより、少し小さいサイズの揺り籠。その中で丸くなって眠っている、キリス達よりもずっと小さな人猫族がいた。

 多分、身体を伸ばしても20センチないくらいだ。


 ネリーの髪と毛皮の色は……黒と白とグレーの縞模様で、アメリカンショートヘアみたいな、不思議な髪をしている。


「ネリーはまだ生まれたばっかりで、赤ちゃんなのにゃ」


「この子も、魔王候補なの?」


 赤ちゃんの時から英才教育(?)を受けなきゃならないなんて、王子って大変だなぁ。


「ちがにゃ」


「あかちゃんにゃからぁ」


「ネリーは言葉も話せにゃいから、まだ候補じゃないにゃ」


 ああ、流石に赤ちゃんは違うのか。


「あれ? でもソラは四人の教育をしてくれって言ってたよ?」


 末っ子のネリーが違うとしたら、四人目の王子は何処にいるんだろう。


「あそこにゃ」


 マティがおててで示した方向を見てみる。そこは窓で……片方のカーテンだけが不自然に盛り上がっていた。


「何か、いる?」


 私は静かに近付いて、カーテンを捲ってみた。


「にゃっ⁉」


 案の定、人猫族が隠れていた。


 なるほど、やっぱり瞳の色は家族と同じエメラルドグリーンなんだね。


 この子は白い毛皮に淡い茶色の縞模様が描かれている、茶トラちゃんだった。


「ミハルはちょっと人見知りなんにゃ」


「ちゃんと挨拶するにゃよ」


 しかし、ミハルはまたカーテンの裏に隠れてしまう。


「や、やにゃぁ!」


 まぁ仕方ないよね。知らない大人が急に現れたら、びっくりするもの。


 でも好奇心は旺盛らしく、ミハルは時々顔だけ出してこっちを見てくる。目が合うと隠れちゃうけど。可愛い。


 私はミハルに近寄ったり無理に触ったりせずに、声だけ掛ける事にした。


「教育係として召喚された布津木和です。宜しく、マティ、ヤナ。ミハルもよろしくね」


「にゃ!」


「にゃぅ」


「……にゃん」


 ああ、皆個性的でそれぞれ可愛いなぁ。

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