第6話 突然の告白。

ドアを開けてそこに立っていたのは、要だった。僕は本当に驚いてしまって、一言も声が出せず、微動だにする事も出来なかったんだ。ほんの少しの間、店の中に奇妙な沈黙が流れた。でもそれを破ったのは要だった。僕を見て、いつもの調子で言ったんだ。


「様子見に来たぜ、何びっくりした顔してんだよー。」

「な、なんでわかったんだよ、こ、ここが!」

やべぇ、焦って声が大声になって、うわづっちまった。


「なんだよ、そんなに嫌がらなくても。お前の家に電話しておばさんに聞いたんだよ。ちょっと様子見に来ただけで、すぐ帰るよ。」流石に僕の態度を不審に思ったのか、要は少し声のトーンを落とした。




「なんだ、優君のお友達かい?」

二人の気まずい雰囲気を救ってくれたのはマスターだった。


はい、と頷いた僕を見てマスターは「じゃあ一杯飲んで行ってよ、今日はもうお客さん来ないだろうし、サービスするからさ。」と続けた。


マスターに促されて要はカウンターの席に付いた。優君もと、目で合図を受け、渋々要の隣にすわった。



「そうかー、二人は腐れ縁かぁ。いいなそういう友達って中学か高校位じゃない?出来るのって。だから大事にした方がいいよ。」いつもの調子で、要はすっかりマスターとも馴染んでしまった。こういう所がやっぱ社交的で凄いと思う。自分に持ってないものを持つ要を、いつも僕は羨ましく思う。まあ、今日の場合はマスターも接客トークしてくれてるだろうけど。


「だからってこんなバイト先迄来るかね普通。」思わず憎まれ口を叩いてしまう僕。


「いや、実は報告があってさー、明日でもよかったんだけど、やっぱり一番に親友に報告したくてさ。」ニヤリ、と笑って意地悪っ子のような、いつも優をドキっとさせる顔をした。


「なんだよ、報告って。」


「俺、彼女出来たんだ!」






すると僕は持っていた珈琲カップを落としてしまった。慌てて布巾を差し出してくれたマスターの動作、要の驚く顔がスローモーションに見えた。

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