第9話 何年か前のお話 1

「ねえ、ギンピイ。失敗かしら」


 ああ、俺って何しても空回りなんだ。


「いいえ、ピンギイ。これは実験。

 なんでも良いから呼び出せれば成功なのよ」


 ああそうだ、なんでもいいから俺を認めてくれ。


「じゃあ、コレってゴミってことかしら」

「うーん。試作品と言いたいけど、いらないものね」


 ああなんだ、俺はここでも不要物か。


「待ちなされ、コレの持ち物には有用な物があるかもしれませんぞ」

「え〜でも、コレに触るのは、・・・ちょっと」

「爺が触ってよ。言い出しっぺなんだから」


 ああ違う、また今も汚物扱いされてるんだ。


「ふぅん、なんか色々あるわね」

「ねえ、コレってどう使うの?」


「ftghんっっj、っgtでいjgtc」

「ちゃんと説明なさい」

 脳天に棒のような物を打ち込まれ、声にならない声を上げる。


「何言ってるかわかんないね、ピンギイ」

「何言ってるかわかんないよ、ギンピイ」

 ゴス、ゴスと何度も棒を打ち付ける姉妹?双子?

 こっちも、向こうの言ってることがわからない。


 けど、俺はここでもサンドバッグにされてるんだ。





「動かなくなっちゃたね、ギンピイ」

「飽きちゃったね、ピンギイ。

 ねえ、爺捨てても良い? 飼うにもこいつ好みじゃない」


「ふむ、今度は言葉がわかるようシステムをいじる必要がありますな。

 このままでは、有用な道具を持っていたとしても、使い方一つわからぬ。

 嬢ら、これはまだ生きてますぞ」

「良いんじゃない、生きてのたれた方が苦しみそうだよね、ピンギイ」

「うーん、でも苦しむ所を見れないからちょっと微妙かも、ギンピイ」

「では、どうなされますかな?」

『考えるの、面倒臭い』


 ハモる2人の声を聞いて、俺は意識を手放した。

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