　世界は老爺の肋骨に囲まれ老婆の白髪が四肢に巻き付いたマリオネットの如き中身の抜けた張りぼてであると人々は認識しながらも仏の掌の上で踊る猿のようにただ揺るぎない安住の地であると自己暗示をひたすらに続け僅かな苦痛は薄い幸福を塗り重ねることで目を逸らし湖に張るひび割れた氷の上でタップダンスを踊る彼らは自分の意志で動いていると信じ切っているマペットのように美しく無様で滑稽な姿に見慣れたが故にその日常を無意識に肯定し少女が宿す白百合の高潔さを汚さんと節くれだった無骨な指で囲み保護した気になり神的良心に忠実な人間としての振る舞いをするエゴの衣装を盛大に纏った道化師として民衆を楽しませていることに気づかず硝子鉢の中で餌を貰い怠惰に生命時間を無為に消費していく運命の鉄道に車椅子に乗った赤子が地球を割らんばかりに上げた苦しみは宇宙を前に大気に弾かれ大地との間で反響しマリファナの煙は季節風に乗りゴミベルトに住処を見つけ大海を彷徨う果てにツンドラの大地でうずくまる少年の窪んだ目の奥に広がる楽園には冷たい石畳が人間の前に跪き千切れた靴紐で歯を磨き焦点の合わない表情を浮かべ睡眠薬のビールジョッキで歓喜の宴を開いた広間に置かれた片足が折れた深紅の長机は音なき空間に悲痛の叫びを響かせ天上に瞬く星々は水銀の歌声を呼応させ結果100グラムの呼吸は水風船に閉じ込められる道程において一握りの怠惰は繰り返し繰り返し自己主張を続かせることに使命を感じるのに超自我は怠惰を矮小化させようと躍起になりその目は血走り握られた拳から滴る血は大地に染み渡り生命の根源へと触れる機会を素通りし骸骨のグラスにただただ無垢で純真なままに溜まり続け水面に映る虚ろな機械は静かな石灰水の涙を絶えることなく流し続けカラスの鳴き声を上げる歯車は血液を送り続ける心臓のように動く意味を考えること無く回り続け砕かれた労働は声なき闘争を刺激し人々は人間に操られ木の葉が舞い落ちる道理のままに怒りの息を吐き平行線の道を歩みながら無自覚のままに乳化したドレッシングが容器から垂れることを目撃したキリギリスは切り株の上で胡座をかき布団の温もりを忘れた頃ゴンドラに乗った漂流者の汚れた眼鏡が大輪の花の咲き乱れる光景を映し出した先に空っ風に揺られる空洞化した楓の木の下で苔むした石は踊り狂い砂塵が舞うと赤く溶けた鉄が曇天の空から降り注ぎ安楽椅子が軋んだ唸り声を捻り出す傍らでハープの軽やかな高音の調べに寄り添うように生木に燃える松明は鉄筋の割り箸で幼児のささくれを摘み溶岩流の上で華麗に波乗りをこなす鷲鼻の先に止まったトンボは洗濯紐により掛かる腰の折れた人体模型を尻目に秒針の子守唄を聴きながら土臭い水中から歪んだ太陽に唾を吐きかけ足首を掴む椿の花を振り返り鏡の闇へと落ちていく。