1章第2話 そうだ、気晴らしに行こう



 また、時計を見る。

 さきほど確認した時間から30分も経っていなかった。


 時間の進みって、こんなに遅かったっけ……?

 いつもこの時間はサークル活動していたから、時間経つのがあっという間に感じてたけど……。


 お休みの日って何してたっけ?

 ああ、そうか。

 オシャレの勉強して、料理の腕を磨いて。

 少しでも岡崎先輩に振り向いてもらおうと頑張ってたんだっけ。


 岡崎先輩は、今どうしてるだろう。

 この時間なら、サークルのみんなと活動しているよね。

 でも、この後、彼女さんと……。


 あーあ。


 告白する前にフラれて、想いをぶつける相手もいなくて。

 未成年だから酒も飲めなくて。


 このどうしようもない気持ちはどうしたらいいのだろう。

 このまま泣き疲れて眠ってしまえたら、どんなに楽だろう。



 でも、さきほどと同じで。

 不思議と涙は出てきてはくれなかった。



 今日、私は眠れるのかな……。

 幸いなことに、明日から夏休みでしばらくは先輩と会うこともない。

 正直、今の状態で先輩に会える自信がなかった。

 いつも通りなんて、今は絶対に無理。


 2週間後にはサークルの合宿がある。

 それまでには流石に今までと同じように先輩と接することができると思う。

 全く同じというわけにはいかないかもしれないけど。


 オシャレとかはもう気を遣わないかも。

 岡崎先輩に振り向いてほしくて頑張ってただけだもの。

 それに……オシャレも、嫉妬も、疲れちゃった。


 今は一人になれる空間が心地よかったけど、時間はまだまだたっぷりとある。

 このまま部屋の中にいると、気が滅入ってしまいそう。



 仕方ないなぁ。

 どこか綺麗な景色でも見れば、少しは気が晴れるかもしれない。

 河原にでも行こうかな……。

 あそこは私が一番好きな場所だから。

 好きなだけ写真の練習をしてもいいし。


 あ。

 そういえば、SDカードの容量がもうないんだった。

 今のSDカードも保存されている写真は、先輩が写っているものが沢山ある。

 バックアップしようか。

 それとも初期化しようか。

 早く吹っ切れるためにも初期化した方がいいよね。

 でも、サークル活動の思い出だから消したら後悔しないかな……。



 ダメだ。

 今はどちらも選べそうにない。



 そうだ! 駅近くの家電量販店に買いに行こう。

 カメラのグッズでも見れば、少しは気が晴れるかも。

 そのまま、私の相棒ともいえる愛用のカメラで河原で写真撮影でもしよう。

 今なら夕焼け空も撮れるし、色々な撮り方を試せば勉強になるかも。


 思い立ったが吉日というじゃない。

 早く行こう!


 私は愛用のデジタル一眼レフカメラを持って、自宅を出た。

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