1章第3話 趣味友達?
駅は相変わらず人が多い。
どこの国かわからない観光客も沢山いるみたい。
私が目指している家電量販店はもうすぐだ。
「「わ!」」
そこまで痛くないけど、顔面に何かがぶつかった。
同時に聞こえる少し低めの声。
「す、すみません!」
よそ見をしたわけじゃなかったけど、人にぶつかってしまうなんて。
やっぱり、泣いてないだけでショックだったんだと再認識していたら。
「ああ、すみません。気づかずにぶつかってしまいました。大丈夫ですか?」
顔を見上げてみると、綺麗な顔が近くに。
目の前には男性の胸板……?
「わ、わわ、わわ……」
「ん? ああ、すみません……近かったですよね」
おそらく顔を真っ赤にしているであろう私に気づいたのか、少しだけ私から離れてくれた。
いきなりでびっくりした……。
顔や体つきだけじゃなくて声も明らかに男性とわかるし、Tシャツの上からだからわからないけど筋肉質でもない今時な青年といった風なのに。
綺麗だなぁ。
そんな感想を抱いたのは初めてだったし、男の人とこんなに密着したのは初めてだったから、本当にびっくりした。
「そのカメラ、いいですよね」
「そうなんです! 小さくて持ちやすいのに自由度も高くて機能性抜群だったので、どうしても欲しくて一年間バイトを頑張ってお金貯めて買ったんです! でも、周りは型落ちで操作もしにくいって、このカメラの良さがわかってくれなくて……」
「ふふっ」
「あ……すみません! いきなりまくし立ててしまって……」
愛用しているカメラの良さがわかってくれる人がいたことで、嬉しくて我を忘れてしまった。
少しだけ恥ずかしい……。
でも、なんだか、私が手に持っているカメラを見て目を少しキラキラさせている……ように見える?
「このカメラの良さを的確に言えるなんて、よっぽどこのカメラが好きなんですね。
俺も欲しかったから、わかるんです」
「え、そうなんですか!?」
オーバーリアクション気味だったかもしれない。
少しだけ笑われた……気がする。
でも、そんなことよりも。
同志がいるなんて!
今日は厄日じゃなかった!
厄日、撤回っ!
「俺にはそれは小さくて使いづらいなぁと思って買わなかったんですけど、大きいモデルは自由度が少し足りないんですよね。
なので、いいヤツが発売されるまで、俺はこれを使ってます」
そう言って、鞄からデジタル一眼レフカメラを取り出して私に見せてくれた。
私の愛用しているカメラに少し似ているけど、私のカメラよりも少し大きい。メーカーは同じものみたい。
「よかったら、これからお茶でもしませんか? ずっとお店の前で話すのも、恥ずかしいかなぁと思いますし。
それに、もう少しお互いのカメラや写真について話したいです」
「私でよかったら、是非!」
食い気味でOKの返事しちゃったけど、新手のナンパや悪い話だったらどうしよう。
少しだけ考えたけど、目の前の男の人がそんな風には見えなかったので、純粋に趣味友達としてお茶に付き合うことにしよう。
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