1章第4話 先にご飯食べてから



 ファミレスなんて久しぶり。

 

 お店の中はちょうど夕ご飯時なのか、子供の声が少し響いていた。

 子供の声の他にも話し声が聞こえてきて、それなりに賑やかだった。


 多少騒いでも迷惑がられずに長話できるお店といえば居酒屋かファミレスだよね。

 流石に、周りの迷惑になるとダメだし、ドリンクバーだけで長時間話してたらやんわりと怒られちゃうけど。


「私は居酒屋でも大丈夫なのに」


 お酒は飲めなくても居酒屋メニューは好きなものが多くて、私は居酒屋が好きだ。

 よく、サークルのメンバーとも一緒に行くことがある。


「ただでさえナンパしてるみたいなのに、居酒屋なんてモロでしょ。

ファミレスでいいの!」


 そういえば、お店を選ぶときも食い気味で『ファミレスに行こう!』って言われたなぁ。


「付き合わせちゃいましたし、俺のおごりです。

時間的にちょうどご飯時ですし、食べ物も好きなの選んでください」

「わ、悪いですよ!」

「久しぶりに楽しいって思えてるんで、そのお礼です。

気にしないでください」


 久しぶりに楽しいって思えてるって、お仕事大変なのかな……。


 私が目の前に座ってメニューを選んでいる男性に同情していると。


「俺、これにしよう。

ハンバーグとステーキのスペシャルセットにご飯大盛りで」


 男性が選んだものをメニューで見てみる。


 うわ、ハンバーグにステーキってすごいボリュームだ。


「何にしますか?」

「え、えーと、じゃあ、これでお願いします」

「じゃあ、店員呼びますね」


 私はオムライスを頼むことにした。

 失恋のショックであまり食べられないかとも思ったけど、色々あって今まですっかり忘れていたし平気かも。


 それから、私たちはお互いの自己紹介をした。

 谷本 圭介さんは私よりも5歳年上で、SE(システムエンジニア)という仕事をしているらしい。

 私が大学生で未成年だと知った谷本さんが急に怯えだした。


「俺、通報されない?」

「なんか怯えてるようですけど、あと数ヵ月したら20歳になりますし、大丈夫ですよ!」

「そ、そう? 最近のニュースで、未成年だと知らずに売春してたとかで逮捕されたとか聞くから、年齢詐称とかしてないよね……」

「ほら、学生証は嘘ついてないでしょう?」


私は谷本さんに学生証を突きつける。


「確かに……」


 谷本さんは学生証と私を交互に見て納得してくれたようだった。



 やがて、目の前に注文した料理が運ばれてきた。


「カメラや写真の話は食べた後だね」

「はい」


 まずは、目の前のご飯を食べてからだね!

 目の前の料理を見ると、不思議とお腹が空いたように感じてきた。

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