第13話 偏った愛

 ひでです。この職種には、多くのあるあるがあります。

 ・結婚も早いが離婚も早い

 ・バツイチ以上が多い

 ・嫁が年上で鬼嫁

 ・生まれた家庭環境が複雑

 ・見た目に反して気が小さい

 などなど。

 この業界に8年以上いるけど、たしかに当たってる。俺もバツイチだから当てはまってるし。類は友を呼ぶ、ってこと。

 どのあるあるも、あまり聞こえの良くないものばかりなのが気になるけど、例外はある。



「あ! 秀君」

「お疲れ、梨花ちゃん。なんか用だった?」

「お疲れ様。さっきね、ホワイトハウスの監督さんが来てたんだけどね」

「ホワイトハウスなら柘植さん?」

「そうそう。柘植さんがね、秀君はカッコいいねって言ってたよ。ジャニーズ系だって!」

「柘植さんね、よく言ってくれるんだよ」

「秀君ってば。否定しないんだね~」

「事実だし」

「カッコいい~」

「冗談だって。柘植さんね、なぜかイケメン愛が強い。カッコいい人大好きなんだよ」

「そっか~。しきりに、うちの会社はカッコいい子が多いから! って言ってたよ。ホストクラブでもやりなよ、って」

「ホストクラブって。なんかね、この業界あるあるにイケメンが多い、ってのがあるらしい。それに、うちの会社がすごい当てはまるって前に言ってた」

「そっか~イケメン多いんだ」

「気にしたこともないか、梨花ちゃんは」

「そうだね~。そんなあるあるも、初めて聞いたしね。じゃあ、柘植さんにとったら、ここはパラダイスなんだね。だからすごい褒めてくれたんだ。すごかったよね? 愛ちゃん」

「そうですね。テンション高かったし、名指ししてましたよね。私はてっきりそっちの方面の方かと」

「ちゃんと結婚してるから。でも俺もたまに、両党かな? って思う時がある」

「確かに、あやしいですね」

「なんか愛ちゃん、楽しそうだね。私には両党? とか分からなかったけど。みんなが褒められてちょっとうれしかったよ」

「柘植さん。あと誰の名前言ってた? 慎吾さんとか直樹とかそのへん?」

「言ってた言ってた! 陸斗君も言ってたよ。あと社長と祥さんと孝夫さん。でもなんか、もっと細かく言ってたよね? 愛ちゃん」

「言ってましたね。ジャニーズ系が秀さんと直樹君と陸斗君。イカツイ系が原さんに浩司さん。クールなモデル系が慎吾さんに祥さんに社長と……孝夫さんもですね」

「すごい愛ちゃん。よく覚えてるね」

「はい。面白かったので。でも、孝夫さんがモデル系なのは?。もやしってあだ名のせいでイメージがわかないです。そう言えばなんでもやしなんでしょ? 別にガリガリでもないし」

「それは、昔もやしばっかり食べてたからだよ。そうだったよね? 秀君?」

「うん。貧乏だったみたい。会社に入ってきた時はガリガリだったって、祥さんが言ってた」

「それが今ではモデルくくりなんて、すごいですね。いまいちピントこなかったですけど、確かに顔は整ってますかね。孝夫さんの努力も認めますし、よしとしましょう!」

「あと気になったのは原さんですね。イカツイですけど、カッコいいですか?」

「こらこら愛ちゃんってば。またブラックな所をだして」

「男からみたら、カッコいいと思うよ。ただ服装とかに注意してくれないと、若干ヤクザ感でますけど。海にアロハでサングラスはヤバかった」

「想像できるね~。ちょっと怖いかも」

「完全にヤクザですね。やっぱりカッコよくないです。男と女では違いますね。梨花さんは誰がカッコいいと思いますか?」

「私! 誰かな~社長かな~」

「社長に関しては文句ありません。私面接のとき、カッコいいと思いました。この会社に入りたいって」

「私はそれはなかったな~。でも年より若く見えるよね。背も高いしシュッとしてるしね」

「社長は、男からみてもそうだね」

「社長は殿堂入りですね。ホストクラブならオーナーですし!」

「愛ちゃんてば、真面目にホストクラブのこと考えてたんだね」

「はい。柘植さんの話し、面白くて。副業で稼げたらいいですよね~」

「愛ちゃんってば、たくましい」

「ね、梨花ちゃん。愛ちゃんって、こんな感じだった」

「うん。でも最近、ブラック面の発動が多い気も……」

「それってさ、金山さんのせいじゃ……」

「そういえば! 金山さんも若ければ、ジャニーズ系とか言ってましたよね、柘植さん」

「そうだったかな~?」

「でも金山さん。可愛い顔じゃない。目とか大きいし。暑さで最近よれってしてるけど、金山さんもイケメンの部類な気がする」

「秀さん! 目がおかしいですよ。あれはただの変態おやじです。きをつけてください」

「な~に~? 呼んだ?」

「げ!」

「愛ちゃん! 声が漏れてるよ」

「今日も一段と冷たい目をしてるね~。おじさん暑かったから、ひんやりしていいよ~」

「キモイ!」

「あはははは~。僕も愛ちゃんに慣れてきたな~」

「慣れるな!」

「へ~。愛ちゃん、本当にドSなんだ。そして金山さんも相当の変態だね」

「なんかね、愛ちゃんが金山さんに遊ばれちゃってね。煽ってる金山さんこそSじゃないかと」

「いや。あれはドMだよ」

「わかるの?!」

「ホストクラブより、SMクラブじゃない」

「うえ~。気持ち悪いよ」

「梨花ちゃんも大変だね」

「私は平気だよ。それよりさ……秀君」

「あ、気付いた?」

「あれは秀君を見てると思うんだけど」

「どうかな? さしずめ両方だと思うよ」

「私も? なんで部屋に入ってこないんだろう」

「嫉妬ってところかな」

「? 私、何かしたっけ」

「大丈夫。したのは俺だから」

「え! もしかして、ウソ! 私、秀君から離れるね。ごめん」

「梨花ちゃんは天然だよね。あ~あ。なんでこう、偏ってるんだろ。丁度いい人はいないんだろうか」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る