第10話 仕事仲間に国境はない
わたし、中国人研修生のリーです。三年間、日本で働きます。
残りあと二年です。
仕事は大変。でも仕事場の人たちすきです。日本の食べ物もすき。
毎日たのしい。
「お疲様です、原さん。この餃子パーティーの張り紙なんですか」
「リーがな、餃子を作ってくれたらしくてな。今日みんなで食べようってことになった」
「事務所でやるんですか?」
「そう。なんか社長もノリノリで、どうせなら肉も焼くか、とか言ってたから、バーベキューになるぞ」
「大事になってますね。じゃあ、若いの手伝いに行かせます」
「助かる。頼む。下で社長と祥が準備はじめてるから、そこで聞いてくれ」
「了解です」
「慎吾さん、今の聞いたっす」
「直樹」
「さっさと明日の準備してバーベキューの準備しにいきまっす!」
「じゃあ頼む。圭太や裕也たちも誘ってみてくれ」
「はいっす。桃じいもいたんで、声かけてきます」
「みんなノリがよくていいな。リーも喜ぶぞ」
「そうですね。中国人研修生、リーだけになっちゃったから、寂しかったかもしれませんね」
「だな。よし! 俺も盛り上げるかな」
「じゃあ酒の差し入れでもしますか」
「お。慎吾いいね~付き合うぜ。桃じいも巻き込むかな~」
日本と中国じゃ、生活も食べ物も全然違う。
でもわたしは、みんなと仲良くなった。
仕事して、食事して、お酒飲んで。
これからくる研修生に言いたい。
ここはいい所だと。みんな優しいと。
「リーが作ったの? この水餃子」
「はい。ブタさんどうですか?」
「サンキュー。お~結構にんにくのにおいがするな」
「にんにく、いっぱい入る」
「中国の食べ物には、にんにくって感じだな。あと辛い」
「たしかに辛いの多い。日本のは辛くない」
「だろうな。んじゃ、いただきま~す」
「おいし?」
「お~うまいぞ! 皮がもちもちだな」
「皮も作った」
「お~すげ~。あ、桃じい! こっちこっち」
「上手か? 油っぽいのは無理だぞ」
「水餃子だからさっぱり食べれるよ。じいでも大丈夫」
「そうか?」
「桃じいさん食べて」
「せっかくリーが作ったんだしな。もらうか」
「どう? いけるでしょ?」
「そうだな。まぁまぁだな」
「リーよかったな。桃じいのまぁまぁ、は上手いだよ」
「よかった。桃じいさん、まだあるよ。ブタさんも食べて」
「食べる食べる」
「おい、晃。酒はないのか?」
「あるぞ~桃じい」
「お、原のおごりか?」
「まぁな。今日はとことん酒に付き合ってくれ。な、桃じい」
「やだ。原に付き合ってたら、朝になるわ。そんな体力ない」
「嘘つけ。パチンコのことなら夢中で深夜番組みてるくせに」
「パチンコは俺の生きがいなの」
「負けてばっかのくせに、よく言う」
「いいだろ~。さっさと酒くれ」
「はいはい。桃じい餃子食った?」
「食べたぞ」
「俺も食うかな~。おい、ブタ! 俺の餃子持ってこい」
「ブタじゃない!」
「はいはい。小ブタな。つか、それリーに言わね~のな」
「リーはいいんだ。な~」
「な~ブタさん」
「あっそ。リーもえらいのに懐かれて大変だな」
「ブタさんいい人。仕事、休憩いっぱい。ラーメンくれる」
「おいブタ!」
「リー! 内緒だろ、休憩は」
「はい。内緒です。原さん」
「しょうがね~奴だな~。で、リー仕事どうだ? 一年たったが、あと二年がんばれるか?」
「大丈夫」
「リーなら大丈夫だよな~」
「リーはさ。ここ好きか? 日本は好きか?」
「原さん。何真面目なこと聞いてるですか」
「一回聞いてみたかったんだよ。日本と中国って、よくテレビでみるだろう。ブタは考えたこともないだろうけど」
「ないです。必要もないし。リーはいい奴。それだけで十分。仕事仲間に国境はない!」
「ブタ。一生に一度なみのいいこと言ったな。ちょっと見直したぞ」
「いつもいいこと言ってるし! ってちょっとかよ」
「どうだ、リー?」
「わたし、ここすき。仕事はつらいけど、みんなすき。日本もすき。ブタさんすき。コンビニにいっぱい寄ってくれる」
「おい、リー。それも内緒だ」
「内緒でした。原さん」
「そうか。ならいいが、おいブタ! しっかり仕事しろよ」
「してるよぉな~~リー~~」
「仕事してる。よくお腹いたくなる」
「おい! ブタ! 食いすぎだバカ」
「リー! シークレット」
「ブタさん優しい。みんなでごはん食べて、酒飲む。楽し。わたしも、中国に帰ったら教えたい」
「リー! やっぱ俺の見込んだ男だ!」
「はい! ブタさん!」
「よ~し! リーいっぱい食べるぞ」
「はい! 餃子も食べて」
「おう! 食うぞ!」
「お前は食いすぎるなよ、ブタ」
「いやです~。あ、社長だ。リー肉もらいにいくぞ」
「はい! ブタさん」
「愚門だったな。仕事仲間に国も国民性も関係ね~な、桃じい」
「ここだからかもしれんぞ」
「かもな~。でもいいや。なんか気分がいい。やっぱり桃じい、酒付き合え」
「ほどほどにしろよ~」
「俺も付き合いますよ。原さん、桃じい」
「お、慎吾」
「国と国じゃなくて、人と人ですから。ここは大丈夫ですよ」
「だな。次はフィリピンって聞いてるけど。大丈夫だな」
「うちも、国際社会ですね」
「時代が変わったな~」
「原、じじくせ~な~」
「そりゃな。歳もとる。桃じいも長生きしろよ」
「じゃあ、やさしい現場にしてくれ」
「さ~じゃ飲もう! 慎吾かんぱ~い」
「無視か」
「桃じいも、飲も」
「原の酒、全部飲んでやる」
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