■バトルフェイズ〈三人のならず者〉

 持ち前の素早さで先手を取ったのはレナーデだ。すばしっこい風生まれウィンドボーンの男が動くよりも早く接近し、相手を地面に投げ飛ばした。背中を強く打って、一人目は動けなくなったようだ。

 続いて、ダークエルフの女が火球を放った。レナーデは至近距離でそれを浴びたようだったが、髪の毛と衣服が焦げた程度でほとんどダメージを受けていない。

「何だと!?」驚愕した女は一人目と同じように、地面に叩き付けられた。「く……そうか……あんたは……」

 呟きを肯定するかのようにレナーデはにやりと笑った。世界の魔力と結びつきの強いエルフ族の中でも、シティエルフは都市において魔力が増大する――〈市場の神アシュウ〉の加護があるゆえに。相手の魔法に対抗し、自らの魔法を強化する力だ。

 最後の一人に対して走り寄り、ゲオルグは峰打ちを繰り出すが、大男は大剣で防ぎ、反撃の前蹴りを繰り出す。

 ゲオルグは後ろに引いて構えなおす。男は上段に剣を振り上げるが――

「おしまいさ、あんた」

 ゲオルグの背後にいたはずのレナーデが、大男の首筋に短刀を当てていた。

 当たりが薄暗いことを除いても、どうやって一瞬で消え、そこまで移動したのか。

 恐らくは魔法によるものだとゲオルグは結論付けたが、魔道士であるダークエルフの女ならともかく、彼にはレナーデがどんな魔法を使ったのかは窺い知ることができなかった。

 いずれにしろ、大男は戦意喪失したらしく武器を捨てたので、ゲオルグも剣を納めた。

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