第40話作戦


同時刻。

ブラッドベリー団長室。


「八雲…本当に女は、タニアは生かしているんだろうな?」


「ああ、心配か?」


「当たり前だ。

 お前みたいに、仲間を殺すような奴の言う事を、簡単に信じられると思うか?」


「…そのタニアも、ここの幹部を殺したんだろ?」


「そ…そうだが、タニアには殺す理由があった。

 襲われそうになったから、身を守る為に仕方なく殺っただけの事だ。

 お前とは、違う」


「私も同じだ…別に殺人鬼じゃない。

 必要な事をやっただけだ。

 だから、タニアの事は心配するな…

 あの女を殺しても、私にメリットはない。

 ちゃんと…近いうちに会わせてやる」


「わかった。

 あと……お前はどうやって、ステイゴールドを潰すつもりだ?」


「…今、言わなきゃいけないのか?」


「当たり前だ…

 俺はお前を完全に信じたわけじゃねぇ。

 メイジの首は確かにもらったが、罠の可能性もあるからなぁ…」


「罠かどうかは、あんたがステイゴールドに潜ませてる、裏切り者の聞いてみればいいだろ?」


「そうだが、正直、仲間を売る奴は好きじゃねぇんだ。

 お前も、あいつらもな…」


「立派な事だ。

 あいつらとは、誰の事なんだ?

 聞いとかないと、攻めた時に間違えて殺すぞ?」


「ああ…別に構わんがな…

 一番隊副長の小早川、

 二番隊副長のムルザ 

 三番隊隊長のウィルズ、

 三番隊副長のドイタン、

 の四人だ。

 それより、どういう作戦を立ててるのか聞かせろ!」


「作戦を話せば、罠じゃないと納得するか?」


「ああ…

 約束も守ってやる」


「わかった…約束だぞ?

 だが、その前にひとつお願いしていいか?」


「なんだ?」


「酒をくれ」


「何?」


「メイジを殺ってから、あまり気分が優れない。

 酒を飲めば、少しはマシになるだろ?」


深見は、息を軽く吐きながら、部屋の隅に置いてあったウィスキーをグラスに注ぎ、八雲に渡す。

八雲は一口含み、話を始めた。


「どーも…作戦を話そう…

 まず、ステイゴールドの奴らには、私と副団長の片桐が意見の違いで、仲間割れをしたと思わせる」


「そんな事を簡単に信じるのか?」


「ああ、信じるだろう。

 実際に、ステイゴールド自体がそんな状態なんだ。

 不思議には思わない」


「ほう…」


「そこで、私は数人の幹部と団員を連れて、出て行った事にする。

 そして、200名の団員のうち、戦闘に参加しない団員を、

 鳴子が明日の早朝に、こっちに連れて来る。

 ステイゴールドに残るのは、副団長片桐と、一番隊長ニーナ、そして、

 50名の戦闘員だ」


「…って事は、副団長はステイゴールド側につく、って事か?」


「ああ…世話になった義理は返すと言ってな」


「なぜ残す?こっちに引き入れた方がいいだろ?」


「全員が動けば、怪しまれる。

 そのうえ、メイジがいない事もじきにバレるだろうから、

 それを私達のせいにされては、困るからな」


「困るって…お前がやったんじゃねぇか!」


「ああ…まあな。

 だが殺ったのは、タニアだと思わせるよう細工している」


深見は、苦い顔で八雲を睨む。


「…クソだな…お前は」


八雲は、深見の顔も見ずに話を続ける。

「…そして、副団長は戦闘が始まれば、こっちに寝返るようになっている」


「…寝返るって言っても、たった50人ぽっちで何ができるんだよ?

 相手は4000だぞ?戦闘員だけでも、2000以上いるんだ。

 意味ないだろ。

 その位で、なんとかなる相手なら、俺達もとっとと潰してるぜ?

 甘く見ない方がいい」


「…心配するな…あの二人が残っているなら、50人で十分。

 ……以上が私の作戦だ。

 詳しい配置も、頭に入ってるから、それは幹部会議でしよう。

 明日の昼にでも、開けるか?」


「…ああ…言っておこう」


深見は、八雲に関心していた。

八雲は、冷えた目で外を見ている。


「……信じてもらえたようで、安心したよ」

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