第39話迎え


ブラッドベリー拠点内の中心部。


ブラッドベリーの参謀、白河の後を、

カイト達がついていっている。

マキオも一緒に連れてこられた。


ブラッドベリーの街を見ながら、カイトが声を上げる。


「へぇー、すげぇなぁ…ずいぶん栄えてんじゃん。

 ステイゴールドとは、かなり差がありそうだぜ」


マキオも驚く。


「ほんとだ、…見た目は、古びてるけど、普通に機能してそうな街だ…」


マキオもこのシュラに来て、初めて大きな街に来た。

この街は、元は駅前だった場所で、大きなビルが立ち並んでいる。

街中には、大勢の人達が溢れており、活気があった。

戦闘に参加しない団員も合わせて、12000人がこの領内で生活しているからだ。

街の中には、露天のような店まであり、人と物資が豊富なのが、一目でわかった。


カイトがはしゃいで、バニラに話しかける。


「久しぶりにこんなに沢山の人がいる所を見たぜ。

 なぁ…バニラ」


バニラはそれに答えずに、ただブラッドベリー参謀、白河の後をついていく。


「物資も溢れてそうだなぁ?

 いい靴とかあったら、欲しいよな…バニラ」


「…」


「お前はスカーフかな……な?…バニラ」


「…」


「小さいサイズのブラジャーもあるんじゃねーか!」


カイトに何かが飛んできた。

カイトはとっさに受け止める。


「!?」


カイトが受け止めたのは、ナイフだった。

それを見たマキオが二人を離して、バニラに声をかけた。


「バ……ニラ…、

 小石ぐらいに、しとこうよ?」


しばらく歩いて、街の中心地から20分ほど離れたある建物の前で、白河は止まった。


「ココだ」


そこは、大きいが古びた廃病院だった。

カイトは、見上げながら、


「ココ…?」


「…しばらくあんた達は、ココで生活をしてくれ」


不気味なたたずまいの建物に、団員達は、互いに顔を見合わせている。

カイトが不満そうに、白河に言う。


「本部のあるビルじゃないのかよ?」


白河は、冷たい表情で答える。


「…深見団長からは、一度ココで世話をするように言われてる。

 何も問題がなければ、じきに向こうに移れるだろう」


「問題?」


「ああ、裏切ったりするような奴らなんだから、

 きっちり調べてからでないとな」


「…」


「フン、建物の中に食糧などは運んで、用意してある。

 しばらく大人しくしてろ、いいな?」


カイトは建物を見つめる。


「…しっかし…マジかよ……変なの出ねぇだろうな?」


マキオも不安になる。


「出ても出なくても、嫌だよ…こんなトコ…」


白河は、鼻をフンっと鳴らし背中を向ける。


「では、また明日顔を出す」


去っていく白河を、カイトが引き止める。


「おい、うちの団長はいつ来るんだ?」


「悪いが、今日はあちらにいてもらう。

 …なんだ?…可愛い団長だから心配か?」


「…」


カイトは目を鋭くして、白河を見つめた。


「冗談だ。

 大丈夫、心配するな、仲間の生首かかえて歩くような奴に簡単に手は出さん。

 ただ、こちらもお前らを警戒してないわけじゃないからな。

 明日まで、大人しくしててくれ」


白河は、そう言い残して足早に去って行った。

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