第38話サラス
ステイゴールドの本拠地。
武器庫で、調べ物をしている一番隊の副長小早川に、
二番隊隊長のサラスが声をかける。
「小早川さん、メイジ団長を知りませんか?」
小早川は、しゃがみながら振り向きサラスを一瞥すると、また顔を戻した。
「ああ…なんか自分だけが住む為の、状態のいい戸建ての家を探しに行ってるらしい」
「家?」
「そうだ、どうせあの女と住むんだろう。
そのまま隠居してくれると有難いんだがな…」
「俺達と同じビルの中じゃダメなんですか?」
「知るかよ、そんな事。
本人に聞け」
「……」
サラスが考えていると、小早川が振り向き冷たい目を向けてきた。
「それより、サラス……
お前、すいぶんと八雲団長と親しいらしいな…」
「親しい?
別にそんな事は…」
小早川は立ち上がり、調べていた短剣を手にしている。
「じゃあ、なんで俺達に黙って八雲団長の部屋に行ったんだ…
そのあと、わざわざお前を八雲団長が探してたらしいじゃないか?」
「ああ…それはメイ…」
「別にお前がそのつもりならいいんだぜ?
ただそれなりの覚悟をしとけよ?」
「…何を言うんです。
八雲団長は、俺たちを助けようとしてくれてるんだ。
それに、こんな切迫した状況になってきてるのに、
俺たちが仲間割れをしてる場合じゃないでしょ!」
「それは、こっちのセリフだ!
仲間だと思ってるんなら、勝手な行動はするな!」
白河は唾を吐きながら、去っていく。
サラスは背中を向けたまま、後ろで荒々しくドアが閉まる音を聞いた。
サラスはしばらくその場に立ち尽くした。
(どうしてこんなに、バラバラになってしまったんだ…
…こんなはずじゃ……なかったのに……
メイジ団長……あなたが、作りたかったのは…
こんなんじゃないでしょ……なのに…どうして?
……俺達このままじゃ……もう……)
サラスは、ふいに視線を感じ振り返った。
そこには、壁に背中をつけ、腕を組むニーナがいた。
サラスは気まずくなり、急いでニーナの前を通り過ぎ、ドアに向かう。
そしてドアノブに手をかけたが、動きを止めて、その手をおろした。
背中を向けたまま、ニーナに話しかける。
「…こんな奴らを、助ける気になんて…ならないでしょ…?」
「さあな……私が決める事じゃない……
団長が決める事だ」
「…信頼してるんですね…
うらやましいです………仲良さそうで…」
「別に仲良くなんてないさ。
ただ、お互いがやるべき事をやる…それだけだよ」
「……でも、八雲団長の事、信じてるんでしょ?」
「さあね…どうだろ?
どうせ私達は皆……犯罪者だから」
「……そう…ですね」
「……」
「……」
「ねぇ、あんた……
サラス……っだっけ?」
「…ええ」
「ちょっと体がなまってんだけど…
時間あるなら、剣の相手……してくんない?」
「…いいですよ。
こちらこそ、お願いします」
サラスは、ほんの少しだけ、心の雲が薄くなった気がした。
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同時刻。
ブラッドベリーとステイゴールドの境界付近の建物。
ロデオソウルズの幹部、カイト、バニラ、鳴子が二十名の団員と一緒に集まっている。
そこに、十名の団員を連れた男が現れた。
男はカイト達に向かって話す。
「…君らは…ロデオソウルズか?」
カイトは、槍の刃に研ぎ石を当てながら答えた。
「ああ、あんたは?」
「私は、ブラッドベリーの参謀…白河だ。
深見団長からの命令で、迎えにきた。
ついてこい」
「…ごくろうさん」
カイトはヒュッと立ち上がり、バニラ達に顔を向けて、白河の方へアゴをしゃくった。
一行は、ブラッドベリー領内へ向かって行く。
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