第29話ステイゴールド
山から降りたロデオソウルズは、イグニスの小さな街にいた。
今、団員が二百名しかいないロデオソウルズは「ステイゴールド」という団に身を寄せていた。
この団の団長メイジは、八雲団長と知り合いだった。
八雲は、イグニスの中心都市に行く為の道を探している状態だったが、
どの道を通っても、危険な巨団とぶつかる事になる。
この人数で、まともにぶつかっても勝ち目はない為、
この地をに拠点を構えている、ステイゴールドを頼ったというわけだった。
ステイゴールドは、ロデオソウルズの面倒をみる代わりに、
自分達と敵対する団「ブラッドベリー」を壊滅させる為、
協力をする事を求めた。
八雲と片桐は、渋々了承した。
そして、先ほどステイゴールドの団長や幹部達と、大まかな戦闘状況の確認をし、
八雲と片桐は、用意された八雲の部屋に戻ってきた。
「団長、なかなか厄介な相手ですね…
ステイゴールドは」
「ああ…相手は一万人を超える巨団だ、
こちらは、四千…
よく、今まで持ちこたえられてたと思うよ」
「そうですね…
先ほどお会いした、二番隊の隊長サラスと副長のイオナは、
かなり優れているようなので、そのおかげでしょう…
まぁそれでも、このままではいずれ疲弊して、潰されるのは、
時間の問題ですね」
「…ああ」
「ブラッドベリーには、我々が合流した事は、すぐにわかるでしょうね」
「うん。
でも、たった二百名が合流したって、たいした事はないから、
警戒はされないよ」
「そうですね…
では、警戒されてないうちに、何か考えないといけませんが…」
団長……何か案はありますか?」
「…いや…
今は正直、何も浮かんでない。
……片桐は?」
「……右に同じく……
ただ…先ほどの会議で、少し気になる事はありましたが」
「何?」
「団長のメイジさんが、少し席を外した時…
隊長さん方の雰囲気が、少し……
何か感じませんでした?」
「…感じたよ。
おそらく、隊長達はメイジに何か不満を持ってるんだろうね」
「……あまり、良い状況ではありませんねぇ」
「ああ…私達もメイジの知り合いだから、良く思われてはないかも…
隊長達の印象を良くする為に、早めに先手を打った方が良さそうだな…」
「そうですね……
……………ネロを使いますか?」
「……いや…まだいいよ。
…少し休ませたい。
……まだ…いいだろう…?」
「そうですね……
では…カイトかバニラに少しだけ敵を削ってもらうように、
頼みましょうか」
「うん……あまりやり過ぎて、ブラッドベリーに警戒されない程度にって、
伝えておいて。
私は…何か方法がないか、少し考えてみるよ」
「はい。
では、私も失礼しますね」
片桐は部屋を出て行こうと、ドアを開けた。
するとそこには、ミミミが立っていた。
「…おや…どうしまし…」
「ネロは…!」
片桐は、部屋を出てドアを閉じる。
「……」
「どこだよ!」
ミミミが、片桐を見上げて睨みつけている。
150センチと180センチでは、流石に睨まれても、
効果はなさそうだが……
片桐は、少し目を反らして話す。
「……以前お話をしたように、今、団にいな」
「休ませるって言ってたろ!
ドコにいんだよ!」
ミミミは、背中から素早くナイフを片桐の足に刺す。
片桐は、ミミミの足を払い、身体を浮かせて腕ごとナイフを掴み、
ミミミを抱え上げる。
「…っく…離せっ!」
ミミミは片桐の腕の中で暴れながら、腕に何度も噛み付く。
ドアを開けて、八雲が出てきた。
「…片桐…離してやって」
片桐はナイフだけを取り上げ、ミミミを下ろした。
「んだよ!
女の身体を乱暴にさわんじゃねぇよ!」
ミミミは、離れると同時に片桐の足をつま先で蹴り上げたが、
鉄のように硬くて、自分の足を抱えて飛び跳ねる。
八雲はドアを開けたまま、
「片桐、後はいいよ。
私が話すから」
「……では」
片桐は、ミミミを一瞥して、去って行く。
「待てよ、蛇メガネ!
あたしのナイフを返せよ!」
片桐は振り向きもせずに、ナイフを後ろに放り投げた。
ミミミは、慌てながら間違えて刃を掴まないようにする。
「わっったっっと!…たく…あぶねーだろ!
テメェ!」
片桐は無視して去って行った。
「ミミミ、入って」
ミミミは八雲を少し睨んで、部屋に入りながら、
ナイフを確かめると、刃がピョコピョコとへこんだ。
「……蛇メガネの野郎…」
八雲はドアを閉めた。
片桐は、歩きながら思った。
( ……メガネ蛇……じゃないのか? )
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