第5話シノノメ傭兵団 アズマ




曇り空の下、人気のない街は、相変わらずホコリっぽい。

ある雑居ビルに、二人組の男が、足早に入って行く。

その姿を、隠れて数人が見つめていた


追いかけて、入りますか?

クメは、ジェスチャーで、アズマに伝えるが、アズマは首を横に振り、このまま待て、と指示をした。


二十分位経過したのち、二人組は雑居ビルから荷物を背負って、出てくると、30メートルほど離れた建物に身を潜めた。

そこには、三人の男女がいた。おそらく仲間が待っていたのだろう。


しばらくすると、彼らは五人で、周りを警戒しながら、西方へ向かって進み出した。


クメは、振り向き、アズマを見る。

アズマはゆっくりうなずき、五人組と300メートルほどの距離をあけ、追跡を開始した。


彼ら10名の胸には、シノノメ傭兵団の紀章が光っている。


アズマ隊で、最も大柄で(重戦車)の異名を持つダイゴが、小声で頼む。

怪力の持ち主で、優れた戦闘術を誇るが、考えより行動が先走るため、

命令違反で多くの隊をクビになり、アズマ隊に身を寄せている。


「アズマ、奴らのアジトに着いたら、俺を先鋒でいかせてくれ」


アズマが何か言う前に、痩身の体躯ながら、傭兵仲間から(刹那の燕)と呼ばれる剣士、クメが口を挟む。

気まぐれな性格と皮肉屋な口のため、規律を重んじる兵士達からは、敬遠されることが多い。

しかし、剣の才能では天才的と賞賛されている。


「ダメですよ、ダイゴさん。

 この間、先鋒で派手にやりすぎて、メインターゲット逃しちゃったでしょ?もう忘れちゃったんですか?」


「うるせえよ、クメ!覚えてるから、やらせてくれって言ってんだ、名誉挽回だ!」


「へぇ、ダイゴさんに名誉なんてあったんですか?勢いだけだと思ってましたけど?」


「なんだと!?」


「ちょっと、二人とも、今が追跡中だって事、知らないんじゃないですよね?

 喧嘩は、帰ってからやってよ」


副長のスグリが注意する。

傭兵養成所の頃から技術、知能、共に優秀だった女副長スグリ。

しかし、その自分の先には常にアズマがいた。

美人委員長的容姿も相まって、多くの隊が入隊を誘うも全てを断り、

自らが中心となってアズマを担ぎ上げ、アズマ隊を結成。

問題児の多いこの隊のまとめ役を担っている。


「ちょっとスグリさん、誤解です、喧嘩じゃないですから。

 僕はイノシシと喧嘩するほど、バカじゃないんで」


「おいクメ、随分と褒めてくれるじゃねぇか、ドングリよこせ、オラ!」


「二人ともいい加減にして!ちょっと、アズマくんからも何か言ってやってよ」

アズマは微笑しながら、軽くため息をついた。


「イノシシは雑食だ、ミミズや虫も食うんだぞ、体もほとんど筋肉だからな、

 だからダイゴはイナゴでも食べて、もうちょっとパンプアップを・・」


「アズマくん、そこじゃない」


「ジョーダンだよ、スグリ。

 二人とも、スグリを怒らせると面倒だから、やめとけよ?

 あと、今日の先鋒はクメだ」


クメはダイゴに得意げな顔を向ける。


「僕の戦い方を見て、少しは勉強してくださいね?」


「グヌヌヌ・・・」


ダイゴの悔しがる姿を見て、クメは


「あははっ、苦虫噛んでる、やっぱりイノシシだ!」


じゃれ合う二人を見てスグリは呟く。


「・・はぁ〜、この隊にいたんじゃ、いつか死ぬな・・」


五人組は九十分ほど移動して、あるビルに入った。


「アジトはここみたいですね」


クメが呟くと、アズマがスグリに指示をする。


「よし、マーカーを置いてくれ」


マーカーを置くと本部へ信号が送られ、戦闘の合図となる。

アズマは、円陣を組むよう合図する。


「スグリ副長、情報の確認を」



「はい、敵の団名は、イーグルハート

 団員400名、うち戦闘員200名

 ランクはNormal’(ノーマルダッシュ)

 

 メインターゲットは、団長のタカトリ、副長のグレン 隊長がハートとケイコの二人

 警戒ポイント、グレンの投げナイフと、ハートの鎖がまに注意

 

 クメ隊員を先鋒に三人組で行動

 最後尾はアズマ隊長がつく

 先頭時間、六十分を予定

 集合場所はここに

 

 以上です、アズマ隊長、お願いします」

 

アズマは全員を見回す。


「何か質問は?・・・ないな?

 よし、いいか?弱い相手でもポイントを稼ぐために、確実に倒せ

 アズマ隊は、もう少しでハンターランク100位以内に入れる

 同僚の兵士たちに、俺たちの力を示すんだ

 そして、罪人どもに死神が来たことを思い知らせてやれ

 

 さぁ、狩りの時間だ!」

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