第11話ラベンダーの匂い
私は鏡の前の木製の浅い椅子に腰を掛けた。「さあ、目をつぶって」と爽子は言った。シャワーを頭に浴び、爽子はシャンプーを少し泡立てるとゴシゴシと私の髪を洗い始めた。爽子の指先がコシコシと頭皮をこする感覚は気持ちよかった。私は忘れていた眠気を思い出し首を前に倒すと眠気の本流と交差しないように意識をしっかりと持つようにした。
再びシャワーがかかるとシャンプーの泡が私の肩を伝わり落ちていくのがわかった。泡を洗い落としたのか爽子は「目を開けてもいいわよ」と言う。私は目を開けた。鏡を見ると今朝方見た眠たそうな女がいた。今では裸であるが。「あなた眠そうよ。でも眠るのは待ってね体も洗うから」と爽子は言った。
「今日はお風呂出たら直ぐに寝ようかなあ。疲れちゃったわ」と私は言った。
爽子はラベンダーの匂いのするボディソープをスポンジに染み込ませ泡立てると私の体を洗い始めた。肩へ胸へお腹へ腰へ太腿へ足首へ踵へ、最後に手を洗うと上からシャワーをかけた。泡は落ちると私は右手で左手の肌をなぞった。すべすべとし艶があり健康的な肌だった。
「さあ、出ていいわよ。次は私が洗うから、先にお風呂出てドライヤーをして寝ちゃいなさい」
「ありがとう。とても気持ちよかった」私はそう言うとお風呂場を出てタオルを取り頭を軽く拭き取り体も拭いて下着を着た。どうやら着替えは爽子が用意してくれたようだ。パジャマは桜色の上下のスウェットだった。私はそれに着替えると居間に行きドライヤーで頭を乾かした。体から僅かにボディソープのラベンダーの香りがしていた。昼間も夜中も変わらずラベンダーの香りは一貫して深い眠りとそれからピンと張った心地の良い緊張感をもたらす。その香りは眠りの中で明瞭な夢を望むかのようであった。
髪が乾いたのでドライヤーを止めるとベッドに向かいその中に入った。夏場なので薄い毛布だけであるがそれを上に掛けると全身が包まれる安心感があった。そのうち爽子がお風呂から出てきてドライヤーを始めた。私はそのドライヤーのゴーゴー立てる音を聞きながら眠りに落ちた。
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