第9話金魚と花火の風鈴



仕事場に着き爽子と別れると私は社内に入っていった。サングラスをかけたまま入っていくとそれに気付いたのか「おはよう、笹原さん。そのサングラス似合ってるわよ」と上司の金子が言った。

「おはようございます。私もさっき初めてかけて気にったんですよこのサングラス」私は刺し身に油がのりてかっているような上向きな気分になると笑顔を作りそう言った。それに対し彼女は微笑みを返し自分のデスクに戻った。

 私はホットコーヒーを作ることにするとそれが置かれてあるスペースに移動しコーヒーメーカーにフィルターをセットし豆を入れて水道の蛇口から水を汲んでそこに注ぐとスイッチを押した。量は二人分のにした。金子の分も作ろうと思ったのだ。今日は真夏日であるが社内はエアコンが利いているので涼しかった。

 コーヒーが出来上がるまでに社内を見回すと金子のいる窓際のデスクの窓に風鈴があることがわかった。その風鈴はオレンジ色の金魚と朱色の花火が描かれていた。風鈴の鐘から糸が垂れ下がり少し厚めの紙にエアコンの風に当たったのかゆらゆらと揺れていた。しかし鐘は音を鳴らさず、ただそれを揺らす程度であった。朝を半ば過ぎた緊張感のない陽射しがカーテンをやわらかく照らしていた。

 やがてパチッと音がするとコーヒーメーカーのスイッチが切れそれが出来上がったことを知らせた。私はそれを紙コップに注ぐと金子の元に持っていった。金子はそれにありがとう、と言うとそれに一口つけまたキーボードを叩き始めた。私は自分のデスクに行き腰を下ろすとパソコンを立ち上げた。私はその間コーヒーにミルクと砂糖を入れ軽くゆすってから少しずつと飲んでいた。そんな風にして私の今日の仕事は始まった。

お昼まで私は仕事をし、一旦それを切り上げるとお昼休憩を取ることにした。昼食のことを考えると途端に私はお腹が空きはじめた。私は近くのラーメン屋に向かうことにした。外に出て夏の暑気を浴びると肌が汗で若干湿りだした。どこか遠い場所で蝉が鳴いていた。耳をすますようにしてその音を聞くと夏の真っ只中にあり学生の頃、田舎のようなところに旅行へ行ったときのことを思い出した。その場所は溢れんばかりの蝉の鳴き声があった。素朴な広がる田地に水路を流れる清涼な調べ、汗をかいたブルーハワイのかき氷のように青空があった。今日のお昼の空はそれと照らし合わせると青色が薄く水色のようであった。

 私はラーメン屋の中に入った。結構混んでいるが空席はあり、私は座ることが出来た。お冷が来て、メニューを見て私はネギラーメンを頼むことにし、店の人を呼びそれを注文した。私は待っている間雑誌を眺めることにした。その店に置いてあったラーメン専門の雑誌である。ペラペラとめくっていくと、豚骨ラーメンが多いことがわかった。豚骨ラーメンは爽子が好きなことを思い出した。私は普通過ぎると思われるかもしれないがあっさりとした醤油が好きである。そして昨日の夕食もラーメンだったことを思い出し、その時は味噌だったことを思い浮かべていると注文したネギラーメンが着た。

 私は早速割り箸をパキッと割り、スープを飲んだ。あっさりとして少し辛味が利いている。ねぎがどっさりと乗ったラーメンのねぎをスープに少し浸した後もぐもぐと食べる。ねぎは中まで味がついてありごま油と醤油の味がした。とても私の好みに合った美味しいネギラーメンだった。

 私はそれをスープを残し食べ終えるとお冷をコップ一杯飲み。それから会計を済まし外に出た。お腹が膨れたところで私は少々の眠気を覚え会社に戻ったらコーヒーを飲んで目をさますことにした。

 あたたかくて辛いものを食べたせいか体中が夏にも関わらずホカホカとし湯だっているようで直ぐに会社の冷房に当たりたくなった。だから私は早足で会社に戻った。



 私は仕事を夕方過ぎに仕事を終え帰路に着くことにした。窓を見ると今ではそれは少し開けられて淡い赤色の陽を通していた。時折入ってくる風に当たり風鈴が鳴っている。風流であった。パソコンをシャットダウンしサングラスをかけると会社を出た。外はまだまだ暑いもののお昼よりかは涼しくなっていた。

 帰りのバスに乗ったが、昨日はあまり寝ていないせいか少し眠くなりうとうととしていた。私はいつしか目を閉じ眠っていた。

 バスの自分の降りる停留所を名を告げるとビックリしたように起きると降りるためのボタンを押した。バスは次に降りることをコールした。危うく寝過ごすところだった。

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