第8話車中にて


 コンビニに着き店にある中華まんを8つほど買うと車の中でそれを食べることにした。肉まんを2つとピザまんを2つカレーマンを3つにあんまんを1つ。

 私は始めにカレーマンに手を付けた。中はチーズが入っていて具はひき肉やじゃがいもが入っている。子供でも食べやすく作られいるためか甘い味わいだった。爽子と健も思い思いにほおばっている。中々美味しかった。

「中々いけるじゃん」と爽子は言い、そうですねと健は言った。外は暑かったのだが冷房がついている車内は涼しく快適に朝食が摂れた。ちょうど私が座っている助手席のフロントガラスの上に太陽はあった。眩しさを感じ、サングラスを探す。それはすぐに見つかりレンズが円の形をし黒色のサングラスをかけた。すると太陽を直に見られるくらいの暗さに視界はなった。

「今日はこのサングラスをかけて仕事場まで行こうかしら。陽射しが強いし」ドアの外にあるサイドミラーを見ながら私は言った。これは爽子のサングラスであるが、自分がかけても割りと似合っていると思う。

「お似合いよ。貸してあげる」爽子はそう言うと中華まんをパクリと食べた。「この後は健くんを家に送って、茜子を仕事場まで送ればいい?」私はそれに頷くと健はお願いします、助かりますと言った。

 食事を終えると駐車場から出て健の家に向かった。健の家は都市部から少し離れた場所にあり車で二十分程かかった。健は古い木造のアパートに住んでいた。健は一旦車の外に出ると「じゃあ、ありがとうございました。また三人で遊びましょう。今度はどこかに出掛けませんか?」と言った。爽子は私の方を見てどうするの?と言った眼差しをした。

「そうね、私の方からまた連絡するわ。夏だからどこも暑いから涼しい冷房の利いた所がいいわね。まあ考えておくから、楽しみにしておいて」私はそう言ってからさよならを告げた。健もそれに答え、車のドアを閉めると家の中に入っていった。

「まるで、あなたが主導権を握っているようね。私とあなたの関係でもあなたが主導権が握っているものね。それともう一つ大事なこと」爽子はそう言って真面目な顔になると「あなたの恋人は私だけよ。これは覚えておいて」と言った。いくら嫉妬しないといっても私の恋人は俗に言う彼氏というものを作ることを許さないらしい。「だってあなたもし健くんと恋人になったら、私の事ほっぽりだしそうだもの」と目を大きくして言った。

「あなただけよ。私の一生はあなただけのもの」と私は言った。私は、私を残して爽子が死んだ時のことを考えた。そうしたら私は新しく恋人を作るだろうか。彼女の墓前で考えることは何だろうか。その時初めて私は死にたい、とでも思うのだろうか。それとも彼女の分まで生きようと思うのだろうか。もはや私の魂の一部に爽子の軌跡は封じ込められていた。

 気づけば私はサングラスの黒いレンズを通して夏の青空をぼうっと眺めていた。「さあ発進するわよ。あなたの仕事場でいいのね?」と爽子は言った。私は、はいと言うと車は発進した。

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